清水の舞台から縄ばしごで降りる

次回は4月末に更新です。ナンパってまだ生き残っているんですね。

【旅行記】明治村探訪珍道中

▲本気

大学時代からの朋より突如明治村に 行 か な い か」と誘われた。

耳慣れない言葉だが、きっと日光江戸村東映太秦映画村的なテーマパークだろう。

それなら交通の便も良いだろうし、さっと行けるカジュアルな良いところだと思われたので「行く」と返した。

 

地図で確認して、驚愕する。

 

愛知県 犬山市

 


 

●遠さに驚く

▲ここだよ

▲東京駅から約3時間掛かるよ

おヌシ、ここを何処と心得るか?

へへ

ショットガン・アクション(※)極まれり。

※取り敢えず思いついたらやってみること。本来は複数の方法を端からやっていくという意味も込み。

 

ちなみにこの朋とは、以前投稿した壮絶体験記事の情報提供者・力氏である。

どうやら最近素敵スポットや素敵料理を行脚しているようで、うっかり見つけた明治村行くという意思だけ固めてしまったらしい。

9月頃に行こうぜって歌聖氏(力氏と同い年の朋)と話してたんですけど、姐さん(=筆者)も行きませんか?

行く(揺るがぬ意志)

そんなわけで、7月上旬に急遽決まった明治村探訪。

 

折角お誘いいただいたことだし、交通と宿は私が何とかさせてもらった。

お陰様で『じゃらん』の会員ランクが上がって割引が増えた。

 

【アイコンと登場人物】

筆者、不肖清水。浪人して一歳分老けている為、朋からの呼称は「姐さん」。最近輪行動画や小説の同人誌を作っているが、公務員の身でそれは副業に当たらないのか割とマジで心配。

力氏今回の明治村探訪発起人。ミステリー小説好きが高じて、謎解きイベントを見つけるたびに誰かしら沼に引き込もうとする。筆者には丁寧語だが歌聖氏の扱いは雑なのが毎度のネタ。

歌聖氏。言動がおかしいと仲間内で言われているが、マーダーミステリーやTRPG等ではロールプレイと初心者の補佐を両立しつつ正解に辿り着く、とんでもなく頭の回る末恐ろしい存在

 

●初日(R5.9.16)

明治村へ向かう

新幹線発車時刻30分前に集合して優雅に乗り込もうねお嬢様方等と言っていたのだが、見事に全員混雑に飲み込まれるわ2/3は改札外に行くわで迷いまくる。

結局乗り込んだのは発車2分前だった。あーあ。

 

それでも乗ってしまえば気楽なもんで、早速駅弁を開けたり乾き物を展開したりと2時間程車内女子会を開催。

 

さて名古屋駅に到着したら有無を言わさず名鉄名古屋駅に移動するのだが、ここで朋共の鮮烈なコメントが光る。

名古屋栄えてますね

割と人いますよ、東京並

でも歩くの下手よな

まさか歩行に技術が求められているとは思わなかった。新しい視点である。

 

というのもターミナル駅である都合上、人の流れがかなり入り乱れている。

それだけならまだしも、相手とかち合うことを予期していないのか離脱タイミングを悉く逃し、ぶつかりかかってからやっと立ち止まる人多数

歩きながら避けるのではなく止まってしまうから、後続がバシバシ詰まるという有様。

しかも驚いたことに歩きスマホでないのにこんな状態なのだ。

東京人がどんだけ歩くの上手いか分かるわー

混雑の動画か画像出されて『ここは何処だ?』って言われたら、歩き方で東京か東京以外か絞れる自信がある

すまんな、うちらFrom Capital East(東京の字面直訳)だから

雑かつ失礼なGeoGuessr攻略を放ちながら名鉄名古屋駅に辿り着き、名鉄犬山線に乗り込む。

 

ちなみにこんな無礼を働いているが、力氏は四国出身・筆者は東京都郊外の出で、ガチ東京都心民は歌聖氏ただ一人である。

前者二名は何を都会人の振りしてんですかね。

いや都心部出身だからどうしたという話だが。

 

そんな都会風を吹かす不行儀アラサー共は、犬山線に揺り揺られて犬山駅へ。

乗りたかった電車を一本逃し、遅れての到着。

 

東口からガラガラとスーツケースの車輪を鳴らしながら出ると、今回のお宿・レイクサイド入鹿のご送迎が既にいらっしゃった。

こ の ク ソ 炎 天 下 に 1 5 分 以 上 も 待 機 し て

※到着時の犬山市の気温:30℃

遅れてすみません清水ですッッッッ(勢い)

清水様御一行様ですね!

爽やかな笑顔の送迎スタッフ殿に促され、ワゴンに乗り込む。道程は約20分。

▲あー、何か

▲めっちゃ良い天気(語彙力喪失)

レイクサイド入鹿様の長閑な送迎を受けつつ、車中では靴の話に花が咲く。

晴れて良かったわ。雨向けの靴にしてきたけど大丈夫そうね

運動靴で来ました! 歩きやすいに限りますよ

濡れるとまずいヤツっすね……

は?

え、見せて?

▲力氏靴イメージ(引用元

何でそんな素敵シューズを履いてきたん? 歩くんやぞ?

いや聞いてください。絶対今日履きたかった靴があって、靴屋に取り置きをお願いしたんです。で、今朝届いたんですよ

うん

色の違うヤツが

おい靴屋(圧)

で、『一回外で履いたら交換不能になるしな』とか『いや、逆にこの色もアリちゃうか』とかいろいろ逡巡したんですけど、時間も迫ってるので取り急ぎサンダルを取り出したんです

はいはい

全部紐切れたよね

不運続きでじわる

で、残ったのが親戚に買ってもらったこの子でした

選ばれたのは、綾鷹でした――

よくこんなオチを朝一の数十分で用意したものだと思う。

▲到着

素晴らしい秋晴れの中、レイクサイド入鹿様の構内に入ると女将様がお出迎えをしてくださった。

ようこそおいでくださいました。大変失礼ながらまだ清掃中でございまして、入室は三時からとなりますがいかがなさいますか

大丈夫です、一旦外出しようと思ってます。荷物を預けることはできますか?

勿論です。お部屋にお運びします

ありがとうございます!(大感謝)

スーツケース三つを預けて、いざ、明治村へ向かうとしよう。

▲実は徒歩20分で行ける

ゆるゆると歩く道中の全てがフォトスポットだ。

▲見えてくる入鹿池

▲貸し釣り船が出ている。バス釣り

▲反対側(本宮山)方面もよく晴れて見通しが良い

▲カレンダーにできそうな雰囲気で取水塔が撮れた

やがて山道に行こうという頃、遠目に何かが見える。

あれ、明治村何かじゃん?

あー、ぽいですね

何かですね~

誰も分かんねえのかよ。

文系女三人衆、建築・歴史の知識が一ミリも無いことがここで判明する。

※読者の皆様の中にはご存じの方もいるだろうが、これは重要文化財聖ヨハネ教会堂京都にて明治40年に建築されたロマネスク様式+ゴシックデザインの名作である。

▲山道を5分程登ったら

博物館『明治村

参 着

明治村探索!

着いちまったな……俺達は遂に……(日射病)

ここから我々の計画(?)は始動するのだ……熱疲労

真正面からかましてやるぜ……熱中症

暑さ(もう一度書くが、犬山市の気温は到着時点で30℃でテンションがおかしくなりながらも、力氏が予め購入してくれていたオンラインチケットで三人一気になだれ込む。

▲受付のお姉様が既に浪漫

ここで『明治村』について概要を載せておく。

【明治村概要】(クリックで展開)

博物館『明治村は博物館と冠されていることから分かる通り、テーマパークではない

明治時代の建築物・歴史資料・家具調度品を保護・展示し、当時の時勢を学習するための野外博物館である。

 

全ての建築物(68個 ※2023年9月16日現在)重要文化財(11個)登録有形文化財(56個)愛知県有形文化財(1個)に指定されており、それらを最も美しく見せられるよう、展示までの道中すら展示の一種として演出されるよう配置されている。

また、明治時代の遺物であれば遠方から借りることもあるようで、『名電1号形』を9年間のレンタル展示の後に札幌市に返還することが告知されていた

 

つまり筆者が思い描いていた日光江戸村(散策型テーマパーク)・東映太秦映画村アミューズメント施設)とはそもそもベクトルも設置理由も施設の種類も違ったのだった。

建築物メインなので一見博物館に見えない野外にせざるを得なかったという話である。

▲そもそもこの正門からし

▲旧・第八高校(現・名古屋大学から移築した

登録有形文化財である

 

暑さでイカれた頭のままでは明治村全土に無礼を働きそうなので、正門を入ってすぐのところにあるスーベニアショップにてアイスキャンデー(「キャンディー」ではなく「キャンデー」と敢えて書く拘り)を購入した。

あ゛ー、冷えるー

写真は無いが、如何にも時代を感じさせるレトロフォント、それが深緑色で印刷されたビニールパッケージが私達を明治時代に引き込んでいく。

甘さ控えめで素材の味を前面に出した固めのアイスの何と美味なことか。

甘夏うま……

ミルクうま……

クリームソーダ正解……

記録を見返したら全員語彙を失っていたので、割と危険な状態だったと思われる。

やらかす前に頭が冷えて何よりである。

 

体も冷やすついでにスーベニアショップにて、筆者はスタンプラリーも購入。

お値段200円、集めきったらスタンプ帳が思い出になるタイプのラリーである(つまり集めたことによる景品は無い)

 

さあ心身共に冷え切ったところで早速パンフレット片手に散策しよう、と意気込んだところで力氏から待ったが入る。

実は今回、明治村でとあるイベントがあるんです。それがこちらッ

▲『エコウメグリ

企画・演出:オバケン……?

姐さんが前に話していた『咽び家(※ガチで怖いと評判のミッションクリア型お化け屋敷。これを使った入社面接の記事で知った)の運営さんですよ!

あー……あぁ?(事のヤバさに気づいた)

何これ怖いヤツじゃん

皆様イヤホンは持ってきてくれましたね? 明治村を回りながらミステリーしましょう!

ミステリーかコレ?(根本的指摘)

うーわ肝試しだ、嫌だー!

まさかの力氏のビジョンに戦く二名。

そう、力氏は素敵スポットを見つけたから誘ったのではない。

このイベントを見つけたから誘い、その現場がたまたま明治村だっただけである。

失礼なー! 素敵スポットの写真も撮りたいのですよ!? 鋭意制作中のテキストADVをですねー!

お前ホントこういうの好きね!?

うーしやるぞー(覚悟)

何だかんだ言いつつイベント好きな三人娘は、それぞれイヤホンと『Locatone』を完備したのだった。※エコウメグリの内容と感想は本記事末尾に。

 

ところで、力氏の口から「鋭意制作中のテキストADV」という言葉が出てきた。

聞くところによると力氏が素敵スポット・素敵料理を行脚している理由は、その写真を撮り自作のテキストADVに華を添えたいからだそうな。

同人活動は応援するしかない(決意)

じゃあ明治村全部回って撮らなイカンな!

アザッス!!

明治村のパンフ貰ったよー

アザッスゥ~

んなら、エコウメグリで回りつつ全土を――

無理じゃね?

全土を一日で回るのは不可能だった。

 

というわけで『エコウメグリ』のビビる音声を聞きつつ、素敵な文化財を可能な限り巡っていく。

すみません、カメラの充電が死にました

早くなぁい?

スマホの充電もエコウメグリで潰れると思います

はい? 撮影どうすんの

お二方ッ……!

しゃあ無いな、撮りまくってやるよ(嬉々)

後でLINEに送って通信量爆発させてやる(予言)

以下、画像(とアラサー共の喧噪)を一気に羅列する。

▲【登録有形文化財

三重県尋常師範学校・蔵持小学校

▲……の、教室

何かデッカい蜂いるんですが!

ヒィイイイ(※歌聖氏は物凄く虫が苦手)

こんなもん意図して殴んなきゃ何もしてこんよ、ヘーキヘーキ

で、ズカズカ入って撮影したのがコレ。

明治村は周囲の自然が豊富なので、スズメバチもかっ飛んでいる時期があるらしい。

▲【登録有形文化財

第四高等学校物理化学教室

……の、廊下

雰囲気がありすぎる静謐な空間。囁き声ですらふわりと響く。

他の観光客の方がいたので写真は撮っていないが、当時の階段教室もあり己の大学時代を懐かしむ人もいよう。

▲【重要文化財東山梨郡役所

▲村長の執務室には2023年現在の

村長・阿川佐和子氏のご紹介有

素敵なお姉様が

どなたさんでしょう

(作家さんということしか分からん……不勉強ですみません阿川さん……)

▲【重要文化財東松家住宅

……の吹き抜け

女中さん(明治村学芸員)が清掃をしている横で見学させてもらった。

こりゃまた立派な三階建て

フフフ、ただの三階建てじゃないのよ

え?

これね、元々油問屋やってた人の家でね、灯りがガスや電気式になってからは銀行にシフトして財を成したの。それで平屋→二階増築→三階建造と建て増ししていったのよ

家の進化形とな

ポケモンかな?

でもね、もうこういう建物は建てられないんです。市街地建築物法改正でね

住宅街に三階建ての家を建てられなくなったということですか?

いいえ、木造だけの三階建てができなくなったの。木造オンリーの三階建ては日本に数えるほどしか残ってないんです

▲こんなにも木の香りが心地よい家なのに

この家が壊れたら、もう建てられない。

火災や地震で容易にロストする木造のみの三階建て。

いつこの重要文化財もぶっ壊れるか分かったもんではない。

ナポリを見てから死ね」とはよく言うが、正に「東松家住宅を見てから死ね」である。

▲ガス灯

特に文化財というわけではなく景観として設営されているものだが、在りし日の薄明るさを想起させる。

▲おや

▲あれは……?

残念ながら時間不足で行かれなかったが、後で調べたところ登録有形文化財北里研究所本館・医学館であった。

正面からでなくともその威容が窺い知れる。

▲【登録有形文化財

京都七条巡査派出所

力氏のADV用に謎の画角で撮影してしまったが、レンガの明るい茶と左官仕上げの白がポップで華麗である。

▲京都七条駅に着いた

▲丁度

▲入線の

▲お時間だった

京都市電(↑この車両は明治44年製造)

丁度良いですね、乗って4丁目に行きましょう

力氏の提案で私達は市電に乗った。1回500円。

ほら力氏、座席の画像が入り用だろお?

めっっっちゃ要る(期待)

え、私も欲しいです!

送るぜ~?

読者の皆様も、お好きなキャラでも描いて座らせてあげてください。

 

さて、車掌の景色解説を聞きながら揺られること二、三分。

名古屋駅に到着したが、余韻に浸ること無く我々は進む。

▲【登録有形文化財

歩兵第六聯隊兵舎

▲二階へ上がると

矢場があったのでやらせてもらった

(手前被写体:筆者、奥被写体:歌聖氏、撮影者:力氏)

ちなみにこの矢場、土日祝日しか開いていないらしい。

弓を引くのに割と力が必要で、非力な文化系アラサー女共は三人とも一発ずつしかヒットしなかったが、当たった時の「タァン」という音は本当に癖になるので皆様にも是非挑戦して欲しい。

 

写真を撮り忘れているが、手前隣には連日開いている射的がありそれもプレイした(なおクソエイム・低PSなので全外しした)

▲参加賞を頂いた。脱力モノ

▲【愛知県有形文化財

名古屋衛戍病院……の入口

またも謎の画角で撮ってしまったが、漆喰壁と瓦葺き屋根が武骨な印象である。

(運ばれたくないなココには……)

衛戍=陸軍駐屯なので、要は軍病院である。

一体どんな『治療』が行われていたのか、あまり考えたくはない。

尾西鉄道蒸気機関車1号明治30年製造)

やはり汽車は鉄ちゃんでなくともワクワクする。

この朱の効き具合が最高にシブい。

▲【登録有形文化財六郷川鉄橋

汽車のすぐ横にあるこの橋もシブい。

道として普通に通過できるのも嬉しい。

廃線を歩くような、止まったエスカレーターを昇るような、愉快な違和感を抱く。

▲【重要文化財宇治山田郵便局舎

うわ古のポストッ!!

土産屋で何か言ってたヤツ?(※某アイスキャンデー購入時に発見)

貯金箱ね、確かにレトロで可愛いな

あぁ~イイなあ~……買うか! いや、やっぱり考えるッ(高速自問自答)

後で知ったが、ポストは大きく言うと書状収箱(角柱)→上掲した黒塗りのポスト(角柱)→よく知られている前時代の赤いポスト(円柱)→現行のポスト(角箱)という変遷を経ているそうな。

何で一回円を挟んだのか。

調べてもよく分からなかったので、ご存じの方はご指摘願います。

▲【登録有形文化財工部省品川硝子製造所

逆光が凄まじい。

▲調整してもこんな

硝子製品売ってる……(後ろ髪)

酒アイス売ってる……(後ろ髪その2)

和小物売ってる……(後ろ髪その3)

一人だけ女子力が欠けている人間がいます、誰でしょう。

▲4丁目の町並み(見やすいよう調整をかけています)

▲町並み・その2(見やすいよう以下略)

左から順に登録有形文化財本郷喜之床登録有形文化財小泉八雲避暑の家重要文化財呉服座である。

呉服座では丁度パントマイムが上演されていて、現役の劇場としても使用しているようだ。

 

ところで、呉服座の近くに建てられていた看板を見た。

ヌシら、これ(呉服座)何て読む?

ごふくざ

ごふくざ

これ、『くれはざ』だって……

多分漢検一級で出るので、皆様も覚えておくと明日使えない無駄知識が増えることになる。

▲【登録有形文化財聖ザビエル天主堂

もうこれは何も言うまい。

写真から漂う荘厳をただただ感じ取って頂きたい。

▲入って右にズドンと置かれた薔薇窓

圧 巻

▲【登録有形文化財鉄道寮新橋工場・機械館

元は機関車を修理するための場所だったとのことだが、その広大な敷地内はというと、

▲明治時代の機械がぎっしり

(下段中央と下段右は外に展示)

※大きい画像で見たい場合は要画像クリック

並ぶ機械の内、3つが重要文化財である(※もう一度書くが、村内に重要文化財は11個ある。11個中3つがここにあるのだ)

メカ好きでなくとも、今に繋がる技術とその発展の下地となった彼らを前にすれば、ただただため息が出ること必定だ。

▲【登録有形文化財

日本赤十字社中央病院病棟

……の入り口

▲病室

病院とは思えないモダンな雰囲気。

「ドミトリーですよ」と言われたら信じてしまいそうな明るい空間。

大きな窓から差し込む光がそう感じさせるのだろうか。

 

ちなみにこれを設計したのは片山東熊だそう。

(片山東熊!? 赤坂離宮作って明治天皇から「贅沢すぎ」ってシンプルに呆れられたやん!!)

▲参考:赤坂離宮画像引用:内閣府

赤坂離宮アホみたいなゴージャスさに対し、この病棟の何と温かく素朴なことか。

求められているモノに対し多様な表現ができるからこそ、その名が残る程の名建築家として名を馳せたのだと感じ入る。

 

さて、ここまで見回ったところで、

あぁあ……閉園時間が……

力氏の悲しそうなコメントが入る。

明治村はイベントや時期により営業開始・終了時間が異なるようで、この日は午後5時までであった。

確かに日は傾きつつある。

まだ、まだ見ていないところが……

取り敢えず出るだけ出るか。宿で考えよう

残暑厳しいとは言え9月も下旬、日がどんどん落ちていく。しかも周りは山。都心部よりも釣瓶落としの速度は比べものにならない。

宿着くまでに暗くならないように急ぐべ

4丁目から正門まで早歩き10分、明治村からレイクサイド入鹿様の元まで約20分。

入鹿池の横を通過する際に多少夕焼けの写真を撮ったくらいで、バス釣りの人もいなくなった道路をそそくさと行く。

▲あーら入道雲までオレンジよ

その後若干蚊に刺されながらも、太陽が山向こうにグッバイする前に宿に帰投したのだった。

 

③どうする二日目!? 宿で会議

▲帰ってきたよ

宿に到着したのは午後五時半前。

預けてあった荷物は女将様及びスタッフ様が部屋に運んでくれており、布団も三人分敷いてあった。

取り敢えず情報の整理はいったん置いておき、

▲お夕飯を頂いた

▲私だけ犬山城ビールを飲んだ

酔い酔いになりつつ入浴し(※注:皆様はよく分かっていると思うが、酒気帯び状態で入浴するのは非常に危険。同伴者がいない場合は絶対にやめよう)、お借りした浴衣兼寝間着を着込む。

▲更にそれぞれデザートをキメて

(左:バナナジュース、中:犬山黒胡麻ソフト、右:犬山の桃)

いざ、話し合い開始。

まさかあんなに広いとは……

『エコウメグリ』もまだ終わってないしなあ(※実は最終局面手前で帰ってきている)

うぃ(酔)

明日は犬山城をうろつくつもりでしたけど……どうしましょうか

いいんじゃね? 犬山城はまた今度で(酔)

姐さんのスタンプラリーも終わってないですもんね

ワシ? 別にええよ、また来ればいいんやし(酔)

二日目……明日も明治村に行っていいかな?

いいともー(酔)

でも明日ってチェックアウトですよ。荷物は明治村のコインロッカーに入れれば良いとして、そもそもあの道をまた行くんですかって話

送迎をお願いしてみましょうか、入鹿様に

せやね、でも言うなら今日中に言わんと(酔)

で、帰りはどうしたら?

明治村正門前にタクシーの待合エリアがあったので、アプリ使って配車依頼すれば……

それ大丈夫か? タクシーが迷ったら事だぞ(酔)

あー……今口コミ調べたら『変なところにタクシーが向かった上に「うちはちゃんと行ってるので」とか言って遠いところで待機された』とか書いてますね

帰りはなまじ新幹線の心配があるから、賭けたくはないわな(酔)

他の手段はバスかー

バスなら13:55発で犬山駅14:15着ですね。犬山駅名鉄名古屋駅で約30分、名古屋駅からの新幹線は15:51なので十二分に間に合いますね!

じゃそれで良くね?(酔)

てことは明日の動きは、チェックアウトと同時に明治村へ送迎してもらう→残りを片す→土産買ってバスに乗る→帰る、で確定かな?

いいともー(酔)

実質力氏と歌聖氏で話を付けてくれたので非常に楽だった(酔客並感)

酒に弱い癖にビール(度数5)とチューハイ(度数7)なんかキメるからこうなる。

 

眠すぎるので荷物を纏めて、ではお休みなさい……。

 

●二日目(R5.9.17)

①チェックアウト& Go to 明治村

▲おはようございます

他二名より圧倒的に早く寝付いたからか、6時に目が覚めた。

今日もよく晴れそうである。

オハザァース

力氏もぼんやり起きたので共に朝風呂に入った。

他の客がおらず貸し切り状態で伸び伸びと利用させてもらった。

 

戻る頃には歌聖氏も起床していたので、

▲朝ご飯を頂き

▲チェックアウトして

博物館『明治村

再 臨

前日の割と夜中にいきなり依頼した(超不躾)にも関わらず、ド朝っぱらから送迎を行って下さったレイクサイド入鹿's スタッフ様には清水一同、心から御礼申し上げます

ちなみに3分程度で着いた。驚きの速さ。

 

②見て食べて歩いて

はいガンガン行きますよ!

エェ~イ!

ウェーイ!

というわけでこちらも一挙羅列。

▲【登録有形文化財

第四高等学校武術道場「無声堂」

兵法書孫子』の『虚実篇(※戦争においていかに主導権を握るかが書いてある)』にある言葉から名付けられたそう。

残念ながら中まで行けていないので、次回に持ち越し。

昨日入れていなかったココのカフェ

▲左:チョコソフト(歌聖氏注文)

右:日本酒アイス(筆者注文)を頂いた

日本酒アイスは後味にほんの香り程度の酒風味が漂うものの、味は米の甘みを心地よく感じる美味であった。

「酒をアイスにしましたー!」という奇を衒ったものではなく、きちんとスイーツとして成立している。

 

なお、力氏はこの間に併設の硝子ショップを見物していた。

商品が全て一点物である故に撮影できなかったのが悔やまれる、それ程に煌びやかだったことは付記しておく。

▲【登録有形文化財菊の世酒蔵

こちらも遠目から。

しかし黒壁に白窓枠とは、モノトーンの格好良さを出したかったのだろうか。

それとも酒造りに合理的なのか。

山間の屋敷は洋風と相場が決まっているけど、和風もいいなあ……

(こやつ、もしかしてこの写真をクローズド・サークルものに使うのか)

▲【登録有形文化財金沢監獄正門

村内バスで5丁目に到着した訪村者をお迎えするのが、何とコレ。

金沢刑務所にぶち込まれることになった再犯者共は、かつてコレをくぐったのだろう。

ちなみに解説書曰く、当時はレンガ造りに白い帯状の模様を入れるのが流行ったらしい。

▲コイツもその一つだってさ

でも監獄如きにお洒落を取り入れてどうするんだ。

▲【登録有形文化財川崎銀行本店

残念ながらこれも遠目からの撮影。

見て分かる通り一部だけもぎ取ってきたらしい。

敢えて廃墟のように配する……

これは物語が始まる予感

DARK SOULSにあったな、あんなの(ゲーム脳

風情の欠片も無いヤツがいます。誰でしょう。

 

さて、そろそろ時間も迫ってきたがお腹も空いた。

5丁目まで折角来たので、ややお高いが入ってみよう。

浪漫亭

内装はレトロシック。帝国ホテルのレストランを彷彿とさせる。

尋常でない混み具合だったので撮影は控えたが、その雰囲気の良さを尊重して是非Tシャツ・ジーパンではなく襟付きの服やワンピースで向かいたいところ。

▲注文したもの一覧(一部ネタバレの為詳細後述)

『エコウメグリ』のコラボメニュー(後述)と、愉快なデザートを注文。

▲愉快なデザート①オムライスアイス

力氏注文。

クレープ生地の中身はバニラアイスがギッチリ詰まっており、香り高いソースがかかっている。

ソースはチョコレートストロベリーの二種類(上掲のものはストロベリーソース)

筆者と歌聖氏も頼もうか考えたが、

オムライスと同じ型を使っています。非常にボリューミーですよ!

と店員さんに本気で止められたことから大きさを察して欲しい。

 

少し貰って食べてみた。

ストロベリーソースが非常にジューシー!

見て分かる通り苺がゴロゴロと惜しみなく入っており、生の果実を囓っているようなフレッシュさを感じさせる。

ソースそのものにも苺感は十二分に溶け込み、自然な甘さでバニラアイスを引き立ててくれる。

 

バニラアイスはというと、これはもうメインを張る存在。

ミルク感抜群なる純白のそれは口に運んだ瞬間からソロリと溶けていく。

バニラの香り芳醇。甘さは強烈と言うほどではなく、単体ならしつこくなく爽やかに、ソースと合わせればその混じり合いを楽しめる絶妙な程度に仕上がっている。

ストロベリーソースを選んだために図らずも紅白で見た目にも華やか。

 

そしてクレープ生地が羽衣レベルの薄さ! スプーンでスクッと切れてくれる。

甘さもかなり抑えてあり、バニラアイスとぶつからない。

ではアイスを包む程度の存在意義しか無いかというと勿論そうではない。

小麦の味わいを追加し、アイス単体では早々に飽きてしまうであろうこのメニューを下支えしてくれる。

パフェに突き刺さるウェハースのような存在感である。

以上、食レポでした。

▲愉快なデザート②アイス「明治の味」

筆者・歌聖氏注文。

見た目にはごく普通のミルクアイスに見えるが、説明文曰く、

犬山城十一代城主、成瀬正勝(※)のお見舞品として届いたアイスを再現」

だそうな。

成瀬正勝:超毒舌な評論家。明治39年出生。おいそこ、明治時代に掛かってたのたった6年じゃんとか言わない。

写真を撮り忘れているが、店舗外にあるメニュー説明には「時代により好まれる味や使われる素材は変わる」というようなことが書いてあった。

 

いざ実食。

まず驚くのはその柔らかさ。するりとスプーンが刺さっていき、欲しい量だけすくい取ることができる。

盛られたアイスの肌を見る限り、もっと荒いというか氷が多いのだろうと思っていたのでこれは予想外。

 

味は淡い。甘さは感じるが、甘くて美味しいと感想を述べる前に消えてしまう。

後味すっきりというより、最早儚いと表現した方が的を射るだろう。

そしてベタベタしないのだ。何故こんな味になるんだ……?

材料は恐らく牛乳か練乳は入っていると思うが、卵の濃厚さや生クリームの脂肪分は感じない。

牛乳シャーベットと言えばイメージしやすいだろうか。乳成分と糖分のみの味わいだ。

 

比較のため力氏のオムライスアイスをもう一度貰ったが、飲み込んだ後も口に広がり貼り付く香りと濃厚さ。

明らかに脂肪分がいることは疑いようがない。

 

このアイス「明治の味」は本当に牛乳と砂糖しか使っていないのかも知れない。だが、それならどうやってシャーベットのような氷の粒ができずに済んでいるのか。

食べ終わってなお正体を捉えられない、何か不思議な世界を見た気分である。

食レポ二回目、終了。

 

満足過ぎる食事を終えたところで、そろそろバスの時間が迫る。

▲北に向かう蒸気機関車12号の見物に寄り道しつつ

▲逍遙の小道なる自然路を行くことに

綺麗だねえ、かつて飛脚もこういうところを走ったんだろうな

あ、キノコ生えてますよ

本当だ。自然や……

あ、白ピクミンおる

ここで『Pikmin Bloom』開くのは草

毒キノコか、もしや……

やがて正門に着く。てんでに土産を買い漁る。

力氏、貯金箱は?

~~~ッ、次回にッッッ

(コイツ、葛藤し過ぎて『刃牙』みたいな表現の悲鳴が出てやがる)

▲バスが来る。さらばだ明治村……

(役所のカレンダーによくある『現在を前の元号で表すヤツ』だ!)

令和5年=明治156年。

当時を知る者は最早おらず、その片鱗が日本各地に残っている。

その一つである『明治村』はまだ見切れていない。

これは広いっすわ。もう一回来ましょう

来よう来よう! 姐さんのスタンプラリーもまだまだありますし

明治村は逃げないからね、来る機会を作るためにわざと残したんや(見栄)

流石っす(見栄見抜き)

 

――『明治村』からバスに揺られて20分。

犬山駅に着いてしまえば、後は早い。

犬山駅名鉄名古屋駅名古屋駅→東京駅。

僅か4時間弱で私達はそれぞれの自宅へと帰っていった。

 

 * * *

 

さて、早速書きますかね

そうしてできあがったのがこの記事である。

読者の皆様に、これで初めて明治村を知ったという方がいらっしゃれば、そして行ってみたいと思ってもらえれば幸いである。

 

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【結論】

明治の残り香に会える場所。

 

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【おまけ:総括短歌】

明治維新後 東京奠都 「追いつけ世界へ」 駆け抜けた人々

 

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【Staff】

企画・構成   清水舞鈴

撮影      清水舞鈴

編集      清水舞鈴

制作      清水舞鈴

監督      清水舞鈴


【Special Thanks】

博物館『明治村』

明治村』運営に携わる全てのスタッフ様

 

レイクサイド入鹿

レイクサイド入鹿運営に携わる全てのスタッフ様

 

方南町お化け屋敷オバケン

株式会社HLC(↑の運営会社)

 

力氏

歌聖氏

スペシャルサンクスまできっちりと読む、画面の前の貴方

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●おまけ:『エコウメグリ』

【内容と感想】(ネタバレしか無いので未プレイ者は開かないこと)

「あなたは『錦絵新聞物語』と言うサウンドツアーに参加する予定が、ツアーの途中から様子がおかしくなり凄惨な錦絵の事件を追体験することになってしまう」(『Locatone』エコウメグリ紹介ページより引用)

 

ストーリー紹介からして大分ジメジメした内容が予想されるコチラ、実際に中身も陰惨であった。

なおストーリーで巡るポイントは明治村における1丁目のほんの一部と2丁目・4丁目。

(※実際に頒布されるパンフレットと現場の演出については、誤タップしてこの項目を開いてしまった人への最後のネタバレ防止策として画像を貼らずにおくこととする)

 

----------【まずは現実の話】----------

「新聞」自体は明治初期に東京で発刊スタートとなったものだが、世相の移ろいを知る必要がある層(知識人層)向け故に、ルビ無し・絵無しで発行されていた。当然学の無い下民共に読めるはずもない。

 

そこに現れたのが「錦絵新聞」で、これが無駄に彩色豊か。殺人の瞬間や幽霊が出現した情景等を鮮やかに描くため、写真じゃないのにライブ感極まる

そんな目を引く内容はすぐに下民共に人気となり、浮世絵(錦絵)とちょっぴりの平仮名解説を以て情報が提供されたのだった。

 

要は「新聞」=本格文芸作品「錦絵新聞」=萌えイラストで釣るライトノベルと思ってもらえればよいと思う。

もしくは「新聞」が現在のそれで、「錦絵新聞」が週刊誌やゴシップ系ニュース

----------【現実の話 以上】----------

 

この「錦絵新聞」をテーマにしたのが今回のサウンドツアー『エコウメグリ』である。

 

参加者は三つの凄惨な錦絵が記載されたパンフレットを交付される。

錦絵の元となった事件はどんな順番で回っても良いが、最終的には全部回ることとなるし、順番に回る方が話の筋が分かりやすい。

 

全て回りきると、とある目的のため光の無い迷宮に向かうこととなる。

 

※以降、特定のスポットに辿り着いたタイミングでイヤホンから勝手に音声が流れるという凄まじい臨場感と共に散策することになる。よって、「声を掛けられる」等の表記は全て、「音声がスタートした」と読み替えてほしい。実際に誰かが立っているとか、誰かに襲撃されるとか言ったことは無いのでマイペースにツアーを進められる。

 

----------【第一部 バラバラ事件】----------

1丁目にある三重県庁舎横を歩いて行くと、道中の奥様方の噂話が漏れ聞こえてくる。

曰く連続殺人事件が発生しており、被害者は全て女性。しかもその女性達はとある若人と恋愛関係にあったというのだ。

これ絶対若人が犯人やん

見抜くの早すぎで草

ミステリー力の強い女三人衆(もしくは飲み屋や都議会でクソつまんない野次を飛ばすジジイ共)が早々と看破しようとしたところで、突如爽やかボイスの青年(学生)に声を掛けられる。

「迷ったなら、丁度方向も同じですから一緒に行きましょう」

100コイツだろ

不審者乙

知らない人にはついて行っちゃダメって躾けられてんだよ都会人はよ!

舐めんなよ村人(そんじん)がァ

青年はその後レンガ通り近くまで行ったところで爽やかに別れる。

 

暫く近くを散策していると、実直な雰囲気の警察官から呼び止められた。

「この辺りは物騒になっている。早めに帰りなさい」

その瞬間、悲鳴が耳を劈く。東山梨郡役所からだ。

向かうと、野次馬の喧噪と狼狽える女性の声がする。

「今度は役所の裏手だってさ」

「また全部ブツ切りで、地面が血まみれだってよ」

「ここは、前の彼女がいた場所……次は私……!?」

どうやらこの慌てる女性は、若人の今カノらしい。

彼女はそのまま通りを駆けていってしまう。

あーこれは死にましたね

『こんなところにいられるか! 俺は部屋に帰るぞ!』

お約束すぎる

今カノを追うため、街中で聞こえる噂話やパンフレットの地図を元にまだ仏が上がっていない場所を探すことに。

てかさ、若人と付き合ってるヤツが死んでるんなら、別の女が若人の相手に嫉妬してるか、若人が女に飽きて殺して次に乗り換えてるかの二択じゃん。女はともかく何でこいつら若人にツッコまないの?

これは若人が異様に信を得てる系か、村ぐるみで若人にツッコめない理由があるかですよ

キモいくらい好青年ってヤツかねえ。しかも村社会。信じるのが遅いけど、一度信じると盲目的に善人って決めつける感じ

うわぁ……(ドン引き)

やがて札幌電話交換局まで来たところで、今カノの声が途絶える。

今までの連続殺人事件が全て建物の裏手で起きていたことから、我々女三人衆も電話交換局の後ろに回り込み、そして目の当たりにする。

「ああ……凄く綺麗だよ……」

例の爽やかボイスの青年が、今カノをミンチにした上で血肉を啜っている。

「あ、また会いましたね。目的地には無事に辿り着けましたか?」

このカニバリズム野郎ー!

薄々分かってたけどやっぱテメェじゃねえか変態がー!

何平然と挨拶しとんじゃワレ殺すぞ(ガチ)

青年=若人はキレ散らかす我々など気にせず、粉微塵の遺体を「綺麗でしょう? たった今僕の妻となった方です♪」とウキウキで紹介してくる。

かと思えば「二人の時間を邪魔されたのは許しがたい」等と言いつつ怒りに変じていく。

凶器である刃物を構え、こちらを亡き者にしようと近づいてくる青年。

「早く帰れば良かったのに……!」

足を速め、やがて走り出す――。

 

「そこまでだ」

 

実直な声が飛び込んでくる。

あの警察官が、すんでのところで間に合ったのだ。

警察官は青年と現場を目の前に我が目を疑いつつも、彼を問い詰めようとする。

だが青年は全く動じず、「秘密にしていたことがあるんです」と不敵に笑う。

 

4丁目のあのことに首を突っ込んだんでしょう?」

「それで僕は、素晴らしい姿を見られました」

「やっぱり今思い出しても」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風呂屋の娘さんが、一等綺麗でした」

「貴様ァア……!」

 

――銃声が一発。爆音は空に吸い込まれていった。

----------【第一部 終】----------

 

撃たれたね

死んだね

ざまぁ無いぜ若人よ(辛辣)

4丁目で起こったことが切っ掛けで、コイツは猟奇殺人に目覚めちゃったんでしょうね

え? じゃあ風呂屋の娘も死んでね?

何故(なにゆえ)

猟奇殺人の話してて風呂屋の娘が出てきてるんなら、4丁目時代か連続殺人の中でか知らんけど風呂屋の娘殺ってる

これでホントに風呂屋の娘の死亡シナリオ出てきたら、先見の明過ぎて草も生えないんだがw←

生えてるよー

感想戦(?)はここまでにして、次のポイントへゆるゆると移動する女三人衆であった。

でも現行犯逮捕のチャンスをみすみすフイにした上に犯人を射殺しちゃうって警察としてどうなの

いいんじゃない? クズだし

(時代が異なるけど射殺権みたいなことだろうか……)

 

----------【第二部 徘徊する女幽霊】----------

宇治山田郵便局舎まで移動すると、やつれた様子の女性が駆け込んでくる。

「遅いじゃない!」と開口一番ドヤされる我々。

いきなりキレんなよ、牛乳飲むか?

不眠だからね、しょうがないね

この女性、日夜黒服の女幽霊に襲われており、いよいよ耐え難くなったので聖ザビエル天主堂へ避難したいとのこと。

しかし一人では道中不安なので、友人(=参加者)の同伴を待っていたのである。

 

宇治山田郵便局舎から聖ザビエル天主堂までの道程には、床屋(本郷喜之床)・駄菓子屋(小泉八雲避暑の家)がある。

店主も店子もこの女性とは見知った顔だから、幽霊に構われ続けて憔悴する彼女を見かねて声を掛けてくる。

「あんた、凄い顔よ! 髪の毛もボサボサ、今までみすぼらしい黒い着物なんて着てなかったのに」

「お前さん、この前はありがとうな! ……この前とは様子が違うな、エラい不格好で、変な歩き方してるしよ……」

女性は好き勝手に言われて苛立ち、その場を離れる。

これ……そうやんな?

いやもうコイツ自身ですよ

多分そうですよ、鏡とか窓に反射した自分を見てビビってるんですよ

女三人衆も好き放題言っているが、女性は聞こえない様子で歩いて行く。

そして湯屋(半田東湯)の前を通過しようという時、ふとぼやく。

ここの娘、本当に気色が悪かった。人のことを見透かして、善し悪しの自覚無く言ってくる。私にも『貴方の恋は叶わない』と言ってきた」

 

「だから自治会だってああするしか無かったのよ」

どしたん? 話聞こか?

今歩いているところは4丁目……あっ(察し)

風呂屋の娘、4丁目時代に死んでること確定

やがて鐘の音が聞こえてくると、女性は晴れ晴れとした表情を浮かべて天主堂に駆け込んだ。

聖域にいればもう安心だと、そう確信して下卑た高笑いを放つ。

「ざまあ見なさい! お前なんかこれっぽっちも怖くないのよ!」

誰もいない天主堂に響き渡る鐘。

 

 

その音が、不気味に歪む。

 

 

我に返った女性はふと、視線を感じ振り返った。

 

 

天主堂の隅に、何か祭事に使うのだろう、全身を映して余りある巨大な姿見が一つ。

そこに、黒服の女幽霊が映っている。

 

「許さない」

「いや、嫌よ……」

「許さない」

「許さない」

「こっちに来ないで!!」

「許さない」

 

 

 

お前を絶対に許さない

 

 

 

――聖域ですら、彼女を守ることは無い。

女性は発狂し、外に飛び出す。

遮二無二走る彼女は、天主堂の正面が深い池であることを忘れていた。

足を踏み外し、そのまま転落する。

やつれていた女が力尽きるまで、そう遅くなかった。

 

最期に耳に響いたのは、天主堂の優しく包むような鐘の音でも、彼女を心配してくれる村民の声でもない。

 

少女の笑い声。

 

それはまるで、駄目押しに彼女を絶望へ突き落とすように――。

----------【第二部 終】----------

 

皆さんね、こういう時の為に着衣泳の授業には真剣に取り組みましょうね

この結末に対してその結論は草

4丁目の事件に関わってますねコイツ

で、勝手にユウレイガーとか騒いで頭おかしくなって入水って感じか

ただまあ、今の時点の印象で言うと風呂屋の娘も悪い

いきなり面と向かって『お前の恋オワタ』はムカつきますよ

でも殺すとこまでやるとは……うーん

相当据えかねてるねコレは

幾ら何でも子供の発言を真に受けてムカついて吊し上げるとか、この村終わってるよ

発言内容にもよるけどな。死にかかった親族を一生懸命看病してるところにさ、『ぶはっwwwwそいつ後三日なんだがww骨折り乙wwwww』とか言われたら、私なら殴る

それは殴っていい

親は知ってたんでしょうか? もし知ってたなら『良いことだけ言ってあげて』くらいの教育はしておくべきでしたね

『正直が大事』という教育だったら赤裸々に言ってしまうこともあり得ますよ

本音と建前の使い分けは日本に未だ残る悪癖だからなあ

何だかきな臭くなってきた。

 

錦絵も残り一枚。

あからさまにグロテスクなその絵はどんな情景を描いたものか。

 

----------【第三部 忌まわしき妄念】----------

鉄道寮新橋工場・機械館から、ざわざわと複数人が口々に話す声がする。

その内容をよく聞くと、自治会長に村民が群がり何かを訴えているようである。

「あの娘がいるだけで不幸になる」

「病気になるとか店が潰れる等、心無いことが言えるなんて」

「会長! どうにかしてください!!」

要するに、風呂屋の娘が不安を煽ってきて大変不愉快なので、何かしらの処遇が必要ではないかと。

このざわめきは、第一部と第二部の過去の記憶なのだ。

 

狭い村社会。明治時代では情報リテラシー等と言うものは存在しない。

小娘一人に悪い予言をされただけで、村は混乱に陥っていた

――聞いた自治会長は深々と頷き、朗々と宣言する。

「この土地を厄災無き安寧に導くため、村の悪全てをあの世に持って行かせよう。可能な限り惨いやり方で小娘を殺す」

は?

そんなことしたら恨まれて逆効果じゃね?

『ついでにお前らのストレス発散もやろうぜ』と言ってるようにしか聞こえないんだけど

自治会長と愚かな村民共歓喜に沸いている――たった一人を除いて。

「待ってください。あんな幼子を手に掛けるんですか」

「おや、これはこれは……新米刑事さんじゃありませんか」

そう、第一部にて登場した実直な警察官その人である。

だが『新米』と称されていることからも分かる通り、彼はまだ若く信も得ていなかったようだ。

「ようやく手にした職を失いたくないだろう?」

自治会と頭数ばかりある愚民共の強烈な同調圧力に、彼は何も言えず引き下がるしか無かった。

衆愚政治ってやっぱクソだわ

アテナイ(※民主政治に思いきり失敗した国)かな?

これだから田舎はよ(※なお力氏の出身)

勿論現代に生きる我々の声など聞こえるはずも無く、馬鹿共は小娘殺しに上気している。

殺戮は自治会幹部で行うこととなり、早速段取りが組まれていった。

 

来たる決行の日、自治会幹部共は湯屋に殴り込み(※但し声が聞こえてくる現場は名古屋衛戍病院前)、娘をふん縛って連れて行こうとする。

父である湯屋の主人は自治会長に追い縋る。

「お許しください、罰なら私が受けます! 娘は大事な、妻の忘れ形見なんです!」

え、お母さん死んでんの……

お父さん、一人になっちゃう

娘を守ろうとするのは父として当然だが、それは自治会の決定に反駁するということ。

彼らがそれを黙って聞くはずも無かった。

 

 

「うぐッ……!?」

 

 

自治会は、反抗分子を刺殺した。

あああああダディいいいいいい!!

これで一人残されずに済むよ! やったね!!(ヤケクソ)

サイコパスかお前!?

眼前で唯一の肉親かつ味方を殺害され、娘は悲鳴を上げる。

だが悼む時間など与えられず、幹部の女に殴られ娘は黙らされてしまう。

 

そのまま名古屋衛戍病院に連れ込まれた娘は屑共に取り囲まれ、人が大の字に寝るには十分な大きさを誇る木造の台に磔とされる。

子供ながらに「ごめんなさい」と許しを請い助けを求めるが、今更無意味だ。

寧ろそれは己の立場が危うくなってから頭を垂れている記者会見のジジイ共と然して変わりは無く、火に油を注ぐだけである。

「これは大義だ」

自治会長は白々しく宣う。

大人が複数人で子供をてんでに甚振り殺害する――それは村の未来の為であり、裁きを行っているだけであると。

全員を共犯にすることで、誰も国や県警に告発することができないように。

告発したが最後お前も殺すぞと相互監視させる為に。

五人組ですか?

江戸時代ですがそれは……

時は明治なのにまだ江戸時代を引き摺ってんのかよこいつら……

呆れる我々、お祭り気分になっていく屑共。

「目を抉れ」

「耳を削げ」

「手を刻め」

「脚を穿て」

「血を出せ」

「裁きを」

 

 

「娘に裁きを」

 

 

振り下ろされる刃。

娘の悲鳴。

心の臓腑が動く限り死ねない。

「裁きを」

眼球を奪われ、いつ何処から刃が振り下ろされるか見えなくなる。

鼓膜を貫かれ、その息遣いから終わりを察することもできなくなる。

痛みを耐えようと力を込め握りたい手は膾に切られてしまう。

せめて蹴って抵抗しようとしても脚は肉を毟られていく。

 

 

「どうした?」

は? 何か言いましたか?

「お前は何故やらない?」

……!?

自治会長が我々に目を向けている。いや、それはあり得ない。

――これは誰かの記憶。当時そこにいた、最後まで参加しなかった者の視界。

「お前も罪人と見做すぞ」

誰だって自分の命は惜しい。況して、やりたいことや守りたいものがあるのならば。

誰かは背中を押され、娘の前に駆り出される。

「痛い……やめて」

わざと喉笛だけは潰されずにおかれた、だるまのような少女の腹に、

「裁きを」

血と脂に塗れろくに切れなくなった刃が――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腹を捌かれ臓物を縄のように引き摺り出され、それすらも微塵切りにされたところで、――ようやくは死ぬことを許された。

部下達が喜びに浸る中、自治会長は吐き捨てるように言う。

暗夜回廊に運べ。日の下に出すな」

その遺体は最早村中の穢れを吸った汚物。村の敷地内に埋葬などしたくもない。

日の下の子である村人の為に、徹頭徹尾陰に追いやらねば。

 

遺体は下々が運んで行ってくれた。

「これで皆の不安も鎮まるでしょう。英断でした」

今後の村の治政について話し合うため、日本赤十字社中央病院病棟に移った自治会長とその懐刀。

かつて共に戦地(※)を駆け回ったことを踏まえ自治会長の手腕を賛美する懐刀に対し、「お前はまだそれを……」と穏やかに笑う自治会長。

※これが何のことかは一切の言及が無い。自治会長(明らかに声が年嵩)と懐刀(自治会長よりは若輩)の声から年齢を推定し、かつ『明治村』であることを考えると、明治時代中に懐かしむレベルで昔の「戦争」は戊辰戦争台湾出兵だろうか。但し明治6年に発布され改訂を重ねていく徴兵令を考慮に入れていないため、あくまでも妄想の域を出ない。

 

その平穏は、戸を叩かれる音で崩される。

 

「開けてください」

「お願いですう」

「助けてください」

「体中から蛆が湧いてくるんです」

「会長、貴方も蛆が湧いている

「災 い は 消 さ な い と」

 

殺戮に参加した者達が、刃物片手に襲い掛かる。

 

「一体、何が……やめろ」

自治会長は狼狽え後退りする。蛆を取ろうと親切心で肉薄する彼ら。

 

逃げようと見やった裏口に、自治会長ははっきりと見た。

 

千々に切り裂いたはずの

 

お前が何故ここにいる!?」

自治会長の正気は、しかしここまでだった。

「災いを裁かないと」

「痒い痒い痒い痒い」

「お前にも蛆が湧いている、殺せ」

部屋中に響き渡る叫声。誰かが誰かを押し倒し、誰かが誰かを刺し殺す。

動く者が目につかなくなるまで、狂戦士のように――。

 

やがて部屋は静まり返る。

一人立ち尽くす彼は、誰ともなしに呟く。

 

「ああ、何て酷い、何て」

 

 

 

 

 

 

美 し い

 

 

 

 

 

 

 

事件として表沙汰になるのに、そう時間は掛からなかった。

だが、唯一残った青年は立ち去った後で目撃者は無し。

誰が誰を葬ったのか分からない程入り乱れた肉塊を前に、警察はこう断定した。

集団自殺

----------【第三部 終】----------

 

ざまあ見ろとしか

でも幼女は結局やられてしまった……

これで時系列がはっきりしたね。最後に生き残った青年が第一部のカニバリズム野郎。多分殺戮に参加したけど蛆は湧かず、長い時間掛けて追い詰められたのが第二部のラリった女

でぇー字面が不穏なんですが、『暗夜回廊』ですか次は

これは暗いぞお?

お伝えしておくと、この『暗夜回廊』自体は名前を変えつつ普段もあるみたいです。イベント用に今回だけ作ったとかではなくって

普段から用意してるのか……(困惑)

いらねー(恐怖)

『暗夜回廊』は歩兵第六聯隊兵舎の二階にあるらしい。

そこにぶち込まれた娘は何を思うのか。

 

----------【終局 暗夜回廊】----------

明かりは無い。

窓も全て封じられている。

音すらしない。風も通らない。

僅かに手を伸ばすだけで壁に触れる程度の狭隘な道だけが入り組む。

ダイダロスの迷宮か……)

ギリシャ神話でミノタウロスという半人半獣の怪物は娑婆に危害を及ぼさないよう、名工ダイダロスが作った迷宮に閉じ込められる。

仮に暴れられても早々簡単に出られないようにと。

 

尤も、思念や呪いにとっては全く無意味だったことは先の通りである。

 

帰れ

許さない

お前達を絶対に許さない

 

呪う 呪ってやる

 

のろってやる

 

回廊を進む我々に向けられた怨嗟。

最早村人も観光客も関係ない。

娘を助けなかった――その一点のみの共通項で恨むに値するのだろう。

 

やがて、細く裂かれた布が暖簾のように垂れ下がっている場所に辿り着いた。

これまでの回廊と異なり、明らかに「ここに何かありますよ」と言いたげである。

えっ、これ覗くんですか

……ッスゥー(精神統一)

この状況で襲われたら逃げらんないぞ

だが人間とは愚かである。

やらない後悔よりやる後悔を選んでしまう生き物だ。

 

興味本位で覗いた我々の目に映ったのは――、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前達

生きて帰れない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天井から垂れ下がる何か

床一面に広くこびり付き乾ききっている何か

奥に投げ捨てられた何か

そして元人間だったらしき塊

 

娘の変わり果てた姿を物見遊山気分で見てしまった私達は、呪いを浴びてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうすんねんコレ

寂しいだろうから会いに行ってあげたのに、何だこの仕打ちは! 小娘!

押し売りって言葉知ってる?(辛辣)

このまま東京に呪いを持ち帰る趣味は無いので、どうにか娘に許して頂きたいところである。

しかしどうやって解呪しろというのか。

「全ての話を知った貴方は、もう知っているはずですよ」

困惑する我々に、見かねた案内人がそっと言う。

何処の子だったのか――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、女三人衆は風呂屋(半田東湯)の前にいた。

店先で打ち水をしていた女将と目が合う。

「風呂に入っていかないんならお断りだよ」

ほう、お宅の殺された元店主とその娘の話と知ってもか?

「……!? どうしてそのことを……ここじゃ人通りが多すぎる、中で話を聞かせてくれ

 

招かれた我々は一連の事象を説明した。

サウンドツアーに参加するため訪村したこと、異様な音声、無秩序にかけられる呪い。

女将はため息をついた。

「そうかい。そこまで知っているんなら……」

そして風呂屋の顛末を白状していく。

 

* * *

 

風呂屋の二代目、とある若夫婦が経営していた時代。

明るく人当たりがよい二人は村人に愛され、風呂屋の経営は順調。

やがて梅が咲き誇る季節になり子供を授かると、二人は娘にうめと名付け育てていく。

 

面白いことにうめには神通力が備わっていた。

人を見るだけでその未来が分かるのだ。

これは天恵、きっとこの力で娘は幸せになるだろうと夫妻は思った。

 

だが、うめ7歳の時分に妻は病床に伏せ、そのまま亡くなってしまう。

 

伴侶の忘れ形見・うめ

彼女を立派に育て上げ幸せにするため、父は仕事に一層励むようになる。

まさかその間にうめが神通力を振り回していたとはつゆ知らず。

 

結果はご覧の有様である。

 

現在の女将は四代目。うめの父の妹の孫、即ちうめのいとこ姪にあたる。

親から当時の事件を聞かされていた女将は、同時にあるものを託されていた。

 

うめの両親が手作りしたのであろう、一対の小さな人形。

 

それはうめの父が「自分達に何かあった時は、うめに渡して欲しい」と妹に依頼していたものである。

これを引き継いだ女将の母(うめの従姉妹)もまた霊感の持ち主で、うめの両親があの世で悲しんでいることを感じ取っていた。

 

だが、うめの遺骸へ堂々とこれを持って行くわけにも行かない。

やはりそこは村社会。当時の話を蒸し返して我がことのように糾弾する輩も未だにいよう。

そうなればいよいよ風呂屋廃業の危機である。最悪の場合は二の舞が起きる。

 

遺言に等しいそれをいつまでも届けられないまま、現在に至る。

 

* * *

 

「両親が待っていると伝えてくれないか」

女将はそう言って人形をそっと渡してくる。

「頼んだよ」

……

……?

え? これもう一回あそこ行くの?

あっ、ふーん(察し)

……ッスゥー(二度目の精神統一)

足早に女三人衆は回廊へ向かった。

 

相も変わらず回廊は暗い。

だが、両親の思いを握る我々の耳には、先刻とは異なる娘の声が響く。

 

 

嫌だ

お父さん、助けて

 

お父さんを殺したお前達

絶対に許さない

 

 

娘は自分が凄惨な目に遭わされたから恨んだのではない。

家族に手を下されて怒り心頭だったのである。

 

だが、既に時代は流れ風呂屋も四代目。

第一部のバラバラ殺人も、第二部の幽霊沙汰も、勿論第三部の風呂屋吊し上げも過去のこと。

当時を知る人間など、生きている方が珍しい(※明治時代の平均寿命は44歳

今や彼女は本当に「ただの恨みの塊」でしかなく、最早そこに正当性は無い。

 

我々は例の暖簾エリアに向かうと、彼女の前に人形を供えた。

 

お前達

生きて帰さ な

いい加減にせえよ、お前

こ れは

村人はお前を嫌ったかもしれんけど、親は最後まで守ろうとしてくれたんだぞ

お父さん

目は覚めたか? 親父が待ってるぜ

 

お父さん お母さん

 

 

 

 

 

 

 

 

今 か ら

 

 

帰る ね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界を恨んだ娘は、両親の愛情を思い出したのだろうか。

声は遠ざかり、やがて静寂が訪れる。

今となっては、暗く、音の無いだけの、何のことはないただの廊下だ。

出るか

我々は暗夜回廊を後にした。 

 

* * *

 

エコウメグリ――漢字表記:「回向巡り」。

回向は仏教用語で、自らの善行(死者を供養する等)により得た功徳を故人に回し向け、故人が極楽浄土へ辿り着けるようにすることを指す。

(あれだけの人数を発狂させて死なせた娘が浄土へ行けるとは思えんが……情状酌量してくれんかね仏さんよ)

歩兵第六聯隊兵舎を出る。

 

天が与えてしまった神通力で人生を狂わされたうめと父。

高所から低所へ流れ込む水の如く易きへ流動する民衆。

犯人を捜しても意味は無い。事は起こるべくして起こるのである。

あー、涼しい

まだ暑い時分だが、風は爽快である。

アイス食べたいっすね

ミソサザイの声だろうか、高く愛らしい囀りが枝鳴りに紛れていくのを聞いた。

----------【これにて全て終わり】----------

 

【コラボメニューの内容と感想】(ネタバレしか無いので未プレイ者は開かないこと)

折角遠征したからには、やはりコラボメニューは行っておきたい!

ということで先述の通り、我々は浪漫亭にてコラボメニューを注文していた。

▲コラボメニュー①

サルサソースのピリ辛オムライス

~怪奇事件・消えた薬指~

筆者・歌聖氏注文。

メニューの説明文によると「血だまりの中には、人の指らしきものが! 食べるとやみ付きになる、ピリ辛オムライスです」

こえーよ

カニバリズムにはまらせようとすんのやめろ

勿論リアルに人肉だの血だのが入っているはずはなく、半熟トロットロの卵に粒立ったチキンライス、トマト際立つサルサソースと子供も大人も大好きな組み合わせ。

指を模したる飾り切りが入れられたソーセージが四本転がっていること以外恐るるに足らずである。

付け合わせはカリカリほくほくのハッシュドポテトとシャッキリと茹で上げられたインゲン。

▲コラボメニュー②

りんごのシュークリーム

~忌まわしき妄念~

力氏注文。元々人よりあまり食べない力氏はデザートメニューのみであった。

説明読んでみ。「呪われた村人たちの視線があなたの方にも・・・リンゴのコンポートやソースを使った秋の味覚を堪能できるシュークリームです。
※目玉はカルピス味です」

『※目玉はカルピス味です』

目玉がカルピス味だと断りを入れる必要は果たしてあったのか?

ソースが食欲減退効果のある青色をしているが、味は大変にフルーティーな林檎。

サックサクのシュー生地にもったりとまろやかなホイップクリーム、その下にたっぷりと隠された林檎のコンポートという組み合わせが脳を直撃する楽しさを奏でてくれる。

ソースを付ければより強烈に林檎を主張してくれるが、嫌みではなく爽やかに全体をまとめ上げる。

後はこの視線をどうにかしてくれれば完璧なのだが。

瞳が赤いのでこの村人はクルタ族かも知れない。

 

ということで、文系女三人衆はやいのやいのと好き好きに言いながらコラボメニューを食べ進めていた。

でもさー何でコレ四本なのかね、指

薬指以外残ってたんで、それの表現ですかね?

じゃ薬指はどうしたって話なんだが……

あのカニバリズム野郎、薬指だけ何処に

ゴロリッ

喰っとうやんアイツ

『エコウメグリ』、コラボメニューを食べて初めて完結するということが判明。

 

最後までしっかり楽しませて頂きました。

制作に携わった皆々様、本当にありがとうございました。

The END.