▲旅先で読み放題だよ
紙の重みが感じられない電子書籍を馬鹿にしているワタクシですが、その技術の素晴らしさは周知の昨今。
現物として持っておく必要は無いが旅先で大量に読みたいと考えた作品を、スキャンピーさんにお願いしてガンガン電子化してもらっています。
電子化したものは当然リーダーが無いと読めないので、Kindle Paperwhite(第10世代)を購入してブチ込みました。
しかし動作が重い。
小説を手軽に読むどころの話じゃなかったので、小説専用リーダーでも買おうかと思った矢先に、
ボロいけど余ってるのあるよ
下さい(即決)
●もう販路にいない遺物
SONYはこの機種を出した後、電子書籍リーダーの開発をサイレントに止めてしまいました。
▲Reader Storeと連携していた(過去完了)
結果、この電子書籍ストアからも見限られて、何とボタンがあるのに購入できません。
正確に言えばストアには行かれるものの、ストアにログインしたユーザーをこの機種に登録できません。
よって「ログインユーザーとこの機種の持ち主がイコールか分かんねえから、一応不正防止にダウンロードできないようにしとくか」とストア及びリーダーに判定されてしまうというワケ。
その癖SONY IDにはまだこのリーダーが製品登録できるんですよね……でもLINEの相談窓口には電子書籍リーダーのジャンルが無いという、サポートするのかしないのかはっきりしろと声を大にして言いたい立場に置かれてしまっています。
そんな生みの親のネグレクトぶりはさておき、ちょっと細かく見てみましょうか。
▲ボディカラーは赤、画面は6インチ
▲カバーは合皮なのかボロボロ
▲カバー付属のライトは
▲とうに死んでる
▲ボタンは5種、カチカチ言う
▲画像だと分かりにくいが、
直前の表示が大分残る
OK、OK、ボロさはよく分かった。
そもそもこの子がお披露目されたのは十年前の2013年。
生まれ出でてから半年も経てば過去の遺物呼ばわりされるデジタル機器界において、十年前のヤツなんて今際の後期高齢者同然。
下手すると既に砂塵と化してあの大きな空を吹き渡っているとまで歌われかねない存在です。
しかもそれを読書家の父が仕事場やら旅行先やら寝床までもと散々持ち歩いて奴隷の如く使い倒した後です。
そりゃボロくて当然よな……。
だが君は私の元に来た。
必ずや復活させてみましょうぞ。
●復活への道
▲まずはカバーを
▲引き剥がす!
子供の頃祖母に買ってもらったリリアン編みキットの編み棒がこんな形で役に立つとは、人間万事塞翁が馬……いや、それは大袈裟か?
とにかくこれにより剥き出しになった中身から、既にお亡くなりになっているマイクロSDカードをぶっこ抜く!
それをラジオペンチで介錯した後、
▲風見鶏さんから購入した
32GBマイクロSDカードを
▲フォーマット
クイックフォーマットではないので、時間かかりますよこれは。
▲その間にカバーのボロボロをどうにかしよう
▲似たような色の合皮シートを
▲あてがって型を取る
▲よし……いや、ちょっと待てよ?
▲何で表に線書いたんだ?
本記事の編集に至るまで全く気付きませんでした。
酒飲みながら作業していたらいけませんね!
▲切りぬいて作業は進む
▲はい、ペタッとな
▲……
酒飲みながら作業(以下略)
まあ、これも味かな!
フォーマットも丁度終わりました。
▲キレイキレイになったカードを挿して
▲ハード面、復☆活
続いて内部設定に移りますが……ワタクシ、こういう機材に言いたいことがございます。
お 節 介
Kindle系タブレットの「本を閉じる前に」然り、格安系スマホのプリインストールアプリ然り、『いるだろ? コレいるだろ? いるって言えよホラ』と恩着せがましく下らない機能を入れる暇があるんだったら、動作の軽量化・高速化に命を賭けなさいよ。
例に漏れずこの子にも機能の押し売りがあるので、徹底的に消しに行きます。
①ファクトリーリセット実行、キャッシュという名のゴミを一掃。
(※本機種のファクトリーリセットは無駄に操作が分かりづらいので注意! 先人の素晴らしい備忘録があるのでそれをご参照下さい)
②『アプリケーション』にデフォルトで入っている見本データを削除。
③Wi-Fiを設定し本体のアップデートを実行。
④余計な『写真』や『辞書』の中にある諸々も削除。
⑤『設定』の重くなりそうな鬱陶しいものを解除。
鬱陶しいもの一覧(クリックで展開)
▲クリーニング完了
操作してみると、ボタンを押しても画面タッチでも気にならない程度の待ち時間後に画面が切り替わる!
いいぞお~、平成生まれの君はこの時を以て令和に返り咲いたのだ!
では早速電子書籍を入れましょう。
私のお気に入りの児童文学、『こそあどの森』シリーズ第一巻:『ふしぎな木の実の料理法』でテストだ。
▲うん
▲うんうん
▲……
薄くね?
電子書籍の常として、白地に黒のドット文字ではなく薄ぼんやりした気持ち白めの灰色っぽい背景に、薄ぼんやりした気持ち黒めの灰色っぽい字が浮かぶものです。
故に表示端末にデータが最適化されていないと薄暮か朝靄の如し。
視認度のあまりの悪さに、常に視力検査か色覚特性診断を受けている気分です。
こりゃ駄目か……?
●最適化という苦行
ということで、素晴らしいソフトをお呼びしました。
開発者様のサイトにて、『連番画像を指定サイズにリサイズして、画像だけのLRFまたはPDFを作成します』と書いてある通り、本来は大量の画像を一括編集してPDFとして吐き出すためだけのもの。
その後、開発の進みが先か巷の要望が先か、何にせよ「大量の画像」=電子書籍データの編集に使う者が現れ、以降有志や先達が使い方やオススメの設定を書き残してくれるようになりました。
しかもこのソフトを使ってこの子に電子書籍を入れるという、バッチビトン(©SANNINSHOW)な足跡を残している方がいらっしゃる!
これらを参考……というかまるまる真似して、データを最適化していきます。
▲開いて(画像にある書籍:金子みすゞ『わたしと小鳥とすずと』)
▲設定して
▲書き出す
▲開いて……(画像にある書籍:金子みすゞ『明るいほうへ』)
▲……設定して
▲……書き出す……
これ全冊やんの?(疲弊)
本毎にノンブル(頁数の表記)や余白の幅が違う為、当然ながら一冊ずつ処理することになります。
しかも自動最適化しようとすると、高確率でページが切れます。
即ち一冊ずつ、それぞれ個別に調整をかけ、文字や挿絵が切れていないか一頁ずつ目視確認し、不都合があれば再調整して、また最初から全部確認し直して……という余りにも地道な作業。
数冊ならまだしも、私がデータ化した書籍は150冊以上。
頑張ろうねー(棒)
▲ユーロビートかけながら作業した
(本人はノリノリですが全くそう見えませんね)
●遂に実用へ
というわけで最適化したものがコチラ!
▲濃くなったよ
▲文字も画面一杯に表示され
▲くっきりと見えるように
▲デカい画像で比較すると一目瞭然
大分読みやすくなりました!
そもそもスマホ等のバックライトギンギンな画面だと目が疲れるというので、紙と同じように明るいところでは読めるけど暗いところは見えないというE-inkが出たのだから、薄すぎて読めず目が痛いなんてことは避けたいところ。
それがしっかり最適化され、いちいち「え? 今何て書いてあった?」と眉を顰めながら目を凝らす必要も無い程、くっきりした文字が画面一杯に広がっています。
しかも先に述べた通り6インチという小ささ、文庫本の如きミニサイズで軽やかに何処にでも持ち歩ける。
重量も軽く260g、寧ろスマホの方が重く感じます。
読むのを止めるときは、紙の本同様にカバーをパタンと閉じればOK!
速やかにスリープ状態に入ります。
いやあ嬉しい! 無事に復活した!
旅の新たな相棒よ、宜しく頼むぞ。
●生き残れなかったワケと現在
でもこんなに優秀な子がどうして生き残れなかったんでしょうか?
激重Kindleと違って動作もサクサクなのに……
あ。
▲こいつのせいか!?
現在電子書籍ストア最大手かつ知名度最大のKindleが2007年に誕生。
Reader Storeは2008年に降臨。
Kindleが儲けを気にしないレベルの安売りをしている中、Reader Storeは値段を維持。
その後もKindleが無料期間やら読み放題やらやっている間も、Reader Storeは不利な行いをしていました。
それこそが唯一かつ最大の問題点、Reader Storeに端末を登録させるという暴挙。
(※しかもReader端末に至ってはSONY IDにも登録しないと使えない)
Kindleが日本でのサービス開始とほぼ同時にストアアプリを配信し、アプリを入れてログインするだけですぐ買えてすぐ読めるその時代になってもなお、そのやり方を貫いた結果どうなったか。
2022年電子書籍ストアの利用率がコチラ。
(出典:電子書籍ビジネス調査報告書 by インプレス総合研究所)
1位 Kindle
2位 ピッコマ
消え去りました。
ランキング上位20位にも入っていない。
しかも海外においては物理的に消えました。
海外版Reader Storeはサービス終了し、会員の皆様を楽天Koboに譲り渡したのです。
勿論、品揃え・ファイル形式・対応端末・ユーザーインターフェイス・時勢等の要素も複雑に絡み合っているはずです。
しかし逐一端末を登録しないといけないのは確実に手間です。
Kindleはアプリをダウンロードしてログインした瞬間に「Kindle端末①」のように勝手に認識してくれるのですから、ユーザーフレンドリーの度合いで言えばKindleに軍配が上がるのは火を見るより明らか。
世界を牛耳るGAFAMですが、そう言われるだけの発展が出来た理由は、こういう細かいところに気を配れるからこそではないでしょうか。
さて、PRS-T3S君が生き残れなかった理由を考察してみましたが、Kindle端末より若干優位に立っている部分があります。
▲SDカード!
実を言うと、Kindle端末にはSDカードスロットが存在しません。
そのため本体容量以上の書籍を入れることができず、定期的にデータを削除する必要があります。
こっちの方が余程不親切だと思いますが、『ONEPIECE』や『こち亀』を閲覧用・保存用等と称して全巻ダブりで入れない限りは問題の無い容量が設定されているため、公式としてはあまり問題視していないようです。
しかしユーザーとしては「容量ギリギリになるとただでさえ遅い動作が更に鈍重になる」という評価で、そのチンタラモッサリな挙動の下で今すぐは読まない書籍を選別して消すのは訓練されたマゾヒストでもない限り到底喜べるものではありません。
これは電子書籍リーダーとしてKindle端末と双璧を成すBOOXシリーズ(SKT株式会社)も同様です。
そんなもんが最大手なものですから、当然拡張できるものが欲しいと考える人も出てきます。
そこにこの子ですよ。
MicroSDカードなら基本的に何でもOK。
動作の相性はあるかもしれないが、容量がどんなにデカかろうが問題無く差せる。
とことん拘ってSDカード毎に作品を分類し、逐一入れ替えるという芸当も可能。
恐らくですが、軽量で、安定性が保証されており、問題なく動く電子書籍リーダーの中で容量を拡張できるのはこの子くらいではなかろうか。
そんな特徴からかファンは確実に存在しているようで、現在Amazonではこんなことになっています。
▲たっけ(29,800円)
2013年の誕生当時は約8,000円だったのに、何だこのプレミアぶりは。
ATARIの『E.T』もしくは『デス様』のように、「容量を拡張できる伝説の電子書籍リーダー」として博物館に鎮座される日も近いかも知れません。
----------
【結論】
どんなモノにも、必ず優れた部分がある。
----------
【おまけ:総括短歌】
人々のアイデア詰まった完成品 売れなくたって きっと適所が
----------
【Staff】
企画・構成 清水舞鈴
図画 清水舞鈴
編集 清水舞鈴
制作 清水舞鈴
監督 清水舞鈴
【Special Thanks】
スキャンピー
風見鶏
SKT株式会社
インプレス総合研究所
ChainLP
『ChainLPのインストールから使い方まで』
『書籍を自炊して余白カットや汚れ除去をしたPDFにするためのソフト「ChainLP」』
『中古のSONY Reader PRS-T3Sをファクトリーリセットする方法』
ちびかん氏(↑上記記事の著者)
『ChainLP設定サンプル:Sony Reader PRS-T3S』
Lin氏(↑上記記事の著者)
岡田淳氏(『こそあどの森』シリーズ著者)
Reader Store
スペシャルサンクスまできっちりと読む、画面の前の貴方
え? 結局150冊変換できたのかって?
1 1 冊
全然できていません。
この子、何せReader Storeとの連携だったために、Kindle端末用ファイル形式・EPUBを読み込むことができないんです……。
で、今私が持っている電子書籍データは、三割がPDF、残りがEPUB。
この子が来ると分かっていたら、スキャンピーさんに『Readerに対応させて下さい!』って注文していただろうに……。
残り139冊です。
頑張りまーす(棒)
END.