▲高いいいい
東京タワー。
1958年(昭和33年)のド年末に竣工し、数々の田舎の方や上京民に「東京都のシンボル」としてその雄姿を見せつけた電波塔。
インターナショナルオレンジとホワイトの縞々でカラーリングされた彼は、2012年の閏日に青い後輩が出来上がるまでの約半世紀を、放送・通信の拠点として生き抜いてきた。
しかし平成に入ってもなお破壊対象にされたり昭和の代名詞にされたりと、彼の存在感は衰えることを知らない。
さて、東京タワーを持ち上げておいてアレですが。
私、行ったこと無いんですわ。
●都民の癖に行ってない
……と言われそうですね(上の小見出しから連続でお読み下さい)。
何故行ってないのか。
理由は単純、「行く理由が無い」。
ワタクシは都心部の、特に日本の取り敢えずビル建てとけば都会じゃん? みたいな考え無しの景色に圧迫感を抱く程苦手なので、上ったところでそういう景色しか見えないことが分かりきっている東京タワーに行く価値を全く感じていないのです。
だが、やはりそこは体験に勝るもの無し。
一回行ってから語るべきでしょう。
早速半休を取得しました。レッツゴー!
●You can't miss 東京タワー
▲赤羽橋駅から出た
マジで最寄り駅以外一切下調べをせずに来ました。
だからここからどうやって行ったら良いのか分かんないぜ!
▲取り敢えず辺りを一周してみるか
あった。
五歩右に行けば見える。流石最寄駅。
▲コレは迷いようが無いや
▲まっすぐ行けばいいんだね
▲???
何かいきなり芝公園なる場所に入ってしまいましたが、
▲見えてるから大丈夫
視界からタワーが消えないように道を行けば、
▲着いた
迂回路や直行の道路など、タワーさえ見えていればどう回っても辿り着ける街設計。
ランドマークとはかくあるべきですね。
●昭和の外観と平成の内装と令和の侵食
さてさて辿り着いたは良いけれども、何があるのかな。
何ココ役所?
うちの出身高校にこんな場所ありましてねえ、ピロティとか言ったかな。
▲イメージ
出入り口が日陰になってしまうので、ちょっと暗いイメージになってしまうように感じるこの様式。
ガラスに銀の丸いシールみたいなヤツが等間隔に付いている自動ドアのレトロ感と相俟って、ふるーい見た目。
▲でも中の浮かれ感で
▲役所色が薄れる
▲仕事を選ばないあの方のショップも
観光スポット、100%キティちゃんいる説。
因みにワタクシが知る限り最も極端な所にいたキティちゃんは、陰茎を象ったちんすこう『ちんこすこう』の真隣で紫芋タルトに埋まってました。
沖縄ェ……。
そんな下ネタのある場所も厭わない体当たりな芸風で不動の地位を維持する大御所芸能猫を横目に案内表示を見ると、
▲二階なの?
正門は別のところにあるようです。
うっかり上から入ってしまいましたが、取り敢えずこの東京タワーの根元にねじ込むように建設された建物・フットタウンを一周しましょうか。
▲三階に上がって正面
ここはお土産屋さん?
それにしては随分と雰囲気が暗いというか、都会の路地裏のようなライティングになっているのはお洒落のつもりなのか……?
▲お土産屋さん内部
▲エレベーター前
▲昔からの観光地なら必ずあるメダル製造機
▲たまに見かける新聞機
▲これは普通に凄い、
お菓子のパッケージで組んだ東京タワー
んー、暗い。
どうにも息苦しさを感じざるを得ない。
▲エレベーター前のライトが
東京タワーの切り抜きであるところは
ちょっと可愛いけども
一周する間に分かったのは、フロア全体がスーベニアショップというわけではなく、
▲何か奥に『東京タワーのこれまで』みたいなものを
テレビで流すちっさい空間や
▲ピアニストさんによる演奏が聞ける
待ち合わせホールがある
それと撮り損なってますが、やけに近代的な受付と表示があって、それが三階の大部分を占めていました。
▲案内表示には『RED°』
……何ぞ、それ?
その場で調べて出てきた記述がコレ。
「東京タワー直下にある『フットタウン』内の1階/3階/4階/5階、およそ5600㎡におよぶ空間が新体験テーマパークに!」
(′~`)
ごめんなさい、ちょっと分かりません。
ワタクシ、出先では出先でしかやれない体験をしたい人間ですが、同時に明らかに客寄せのために最近作りましたというものは絶対に触りたくないという超ひねくれ者。
ムスカ大佐から「流行りの服は嫌いですか?」と問われたら「嫌いですが?」と食い気味に即答するレベルです。
朽ちてすらいない「縁結び神社」とか、高所に必ずある「愛の鐘」とか。
独身貴族の僻みだろというツッコミは無しでお願いします。
そんなわけで、折角東京タワーまで来ておいてそこそこの規模のゲーセンならほぼあるだろう内容である『RED°』に寄る目的が私には無い(断言)。
というか、これ多分家族や恋人・友人と連れだって来ないとギャーギャー遊べないよな。
▲一応お土産だけ買って
4階・5階も『RED°』に占拠されているとのことなので、このまま上がって屋上に行きましょう。
●上れ600段! 東京タワーを登頂せよ
▲屋上に来た
▲おおう
半日前に雨が降ったため、若干湿った屋上のアスファルト。
そこに映り込む赤い鉄骨をに気づき頭上を見やると、空とのコントラストが美しい『結界』。
(※結界:送電鉄塔の真下から見上げることにより観察できる、独特の幾何学模様のこと。東京タワーは電波塔であり真下には入れないため厳密には結界とは呼べないが、ここでは広義的意味とする)
「こういうのでいいんだよ、こういうので」と呟きつつ、屋上を回ってみると、
▲おや
STAIRS600(直訳:600階段)
覗いてみると、ここから階段で東京タワーのメインデッキまで上がれるようです。
何だそれ、めっちゃ楽しそうじゃないか。
これこそ現地でしかできない経験だよ! とテンション高めにゲートをくぐり進もうとしたところ、
こんにちは! チケットを拝見します!
ち、チケット?
はい。こちらは外階段を上るルートとなっております。メインデッキへの入場を伴うため、入場チケットが必要となります。
(それもそうだ)……チケットは、すみません、何処で購入できるのでしょうか?
1階のチケット売り場にて承っております
んー? 今どこにいたっけ?
屋上にエレベーターがありますが、上り専用だったり降りる人が待っていたりで考えるのが面倒臭かったので普通に階段で下りました。
▲来ました
ホテルロビーのような豪奢な内装。
2階以上との落差が激しいですが、フロア毎にテーマが決まっているのかも知れません。
※どうしても言いたい政治的な蛇足(クリックで展開)
列を整理すべくベルベッド仕様のロープパーティションが並べられていますが、この日は先述した通り平日。
写真でもお分かりの通りガラガラで、時折ツアー客なのか外国人団体客がゾロゾロやって来るタイミングがある程度。
故にチケットは割とあっさり購入できました。
▲お値段1200円
では右奥から行ってらっしゃい!
朗らかに送り出されました。
▲受付から
▲右奥に
▲おっと?
どうやら階段チャレンジ前に、東京タワーにまつわる歴史や展望台の楽しみ方を学んでいって欲しいということだそうです。
この辺り一帯が考え無しの景色に変ずる前のジオラマがとにかく素敵。
『ALWAYS 三丁目の夕日』をそのまんま投影したような美渋さ(うつくしぶさ)。
私のカメラの腕はド素人以前の問題なので、ホントに大したことの無い切り取り方をしていますが、それでも十二分に上手い写真に見えるのはジオラマの威力です。
いやあ……この景色を見たかったよ、上から……
▲懐古はこの辺りにして進もう
外階段コースは、足下(=フットタウン1階)からメインデッキまでを階段だけで登り切るルートとのこと。
既に一度階段で屋上まで行っていますし何ならチケットのために下りてきていますが、もう一度心新たに上っていきます。
▲再臨
こんにちは! チケットを……あら、先程の方!
えへへ、すみません、購入して参りました
ありがとうございます。拝見します……はい、メインデッキまでですね。それでは、眼鏡や貴重品など落とさないようお気を付け下さい。お疲れの際は無理をせず立ち止まり、休憩を挟んで下さい。600段、行ってらっしゃいませ!
チケットと共に『あるもの』を渡され「あ、これヤバいかもしれん」と思いましたが、もう四の五の言ってられません。
STAIRS600開始!
▲最初の踊り場を過ぎた後
カンカンカン、と軽快に靴音が響く。
外階段は、インターナショナルオレンジのペンキでムラ無く塗られた武骨な金属でできています。
何だか建設現場の職人になった気分です。
▲たまに何か掲示されているぞ
後ろから他のお客さんが来るので、余り止まらないようにしています。
途中の掲示物も撮影したいところでしたが、東京タワーにまつわるクイズや豆知識だったので控えました。気になる方は是非行って確認して下さい。
なおクイズは「ペンキを何年も塗り替えているが、現在どれくらいの厚みになっているか」と言った、タワーにまつわる仕事に携わる方々の顔が見えるような中々興味深い内容でした。
▲どんどん上がるよ
▲おおお、もう300越えたのか
順調順調! まだまだ上がれますよ~。
▲タワーの高さ333mに所縁のある段数に
と、調子に乗っていたのも束の間でした。
▲あ~、大分上ったな~
▲……あ、あれ? まだ400?
嘘だろ? 今膝痛くなってるよ?
帰ってきてから調べて分かりましたが、メインデッキの位置する高さが地上150m。
150mを階段で上ると聞いてもピンと来ませんが、素晴らしい表現をしている先達を発見しました。
曰く、「新横浜プリンスホテルがちょうど地上150mで、ホテル最上階は42階」。
即ちこのSTAIRS600は、ビル42階分を階段で上がっているのと同じ!
クライムミルでもやったことないぞ、そんな量!!
後ろから子供の高い声が聞こえたかと思うと、私の横をヒョイヒョイと駆け上がっていきました。
君ら……400段上がってきたんだろ……?
何でまだ走る余裕があるんだ……!?
▲ま、まだ500……!
▲ひ、ひてぇよ~……(※痛ぇよと言ってます)
▲いや、あと100も無いんだ、踏ん張れ
▲一気に職員用通用口感が出てきたな
メインデッキを構成する部屋の中に入ったようで、周りは壁で囲われています。
も、もうちょっとだ。
▲OAL……「GOAL」か!
キタ―――(゚∀゚)―――― !!
足下に「CONGRATULATIONS」の文字! あ、ありがとううう。
本当にその場に崩れ落ちました。
辿り着いたああ、うおおおお(小さな雄叫び)
小さい子でも15分くらいで上るなんて職員さんが話しているのを聞きましたが、私は20分掛かりました。
出不精の運動不足アラサーなんてこんなもんです。
いやあ……長かった……。
とはいえ、登り切ったぞ。さあメインデッキへ――。
嘘つきいいいいいいい!!!!
まだあるじゃねえかあああ!!
▲わあああその先もあるうううう
▲膝が死ぬよおおお
これにショックを受けたのは私だけではないようです。
この階段の写真は先程私の横を滑走していった子供達が上り切るのを待って撮影したのですが、当初その子達は絶望してその場に蹲り、
「嘘じゃああああん!!! 終われよおおおおお!!」
とギャン泣き。
気持ちは分かりますが全然上がってくれない上に二段を複数人で陣取って泣くもんだから私含む後続が詰まる詰まる。
後から追いついた親御さんに「見えないんか、詰まってんの!」と思いっきり叱られて背中をバンバンはたかれて進まされていました。
東京タワーの運営の皆様には是非とも600段というキリの良い数字ではなく、明確にゴール=メインデッキと表示して頂きたい。
さて、膝をガクつかせながらメインデッキに入ってみました。
▲ほう、良い逆光
▲地平線まで見渡せるのはいいネ
そもそも午後に来ているため、上り切る頃にはやや日が傾き始めていました。
故の橙光、故の夕焼け気味の空。
ビル群は彩度を下げ、日中は醜悪に照り返す彼らも静かに佇んでいます。
他のお客さんもそんな狭間の時間を楽しんでいるのか、叫声を上げて騒ぐようなおバカちんはいないのでした。
以下、撮影したメインデッキギャラリーをば。
▲ハイセンスな足下の帯絵。
よく見るとスカイツリーらしきものが描いてあり、
恐らくここ10年以内に敷設されたと思われる。
▲平日だがメインデッキにはそこそこ人がいた
▲かのご高名なプリンスホテル。
奇しくもWikipediaに掲載されている写真と
ほぼ同じ角度で撮影した
▲見えるビル群4連発。おや?
▲4枚目ズーム。スカイツリーが見えている。
今度はスカイツリー側から東京タワーを探そう
▲赤羽橋駅方面。
あそこから来たのか、と一時間前の自分に感慨。
▲床面にはガラス張りの一角もあり、こんな景色が。
足下が見えてヒャーヒャー悲鳴を上げている
楽しそうな外国人の皆様にこちらもニッコリ。
▲トリックアート床。曲線が描いてあるだけだが、
波打っているように見える。
ご高齢の方がふらついていた。
▲謎の神社。その名も『タワー大神宮』。
分かり易さという点では優秀だが、
もう少し命名をどうにかすべきだと思う。
▲そうこうしている間に暮れていく
▲薄暗くなりつつある中、
メインデッキにあるカフェにて
ホットドッグを頂く
ちなみにこのホットドッグ、ソーセージの皮が分厚いのかムニィブリンッという弾力ある歯応えでスモーキーな香りが漂い、合わせられているのはザワークラウト・マスタード・トマト感の強いケチャップという酸味揃い踏みで非常に美味しかったことを付記しておきます。
酸っぱいのが苦手ならザワークラウトを抜くこともできるよ!
……さあ腹ごしらえも済んだことですし、何より暗くなってきたので帰りましょうか。
▲EXITはこちら
案内によると、何々……「お帰りの際はエレベーターのご使用をお勧めします」……
▲下りも階段一択だろ?
もう一度言いますが、出先でしか体験できないことが私は大好きですから。
階段が用意されている=公式が「下りろ」って言ってるんですよ。
▲上りで使った階段を見ながら下りるんだよお!
▲上った時の景色を反芻しながら下るッ
▲何て乙な空気感だ!
▲そうまるで遊園地から帰る時のあの侘しさのようだ
▲距離感を一度知ったからこその帰りの早いことよ
▲ああ、ビルより低い位置に来た……
出口だ……今600段を下りてきてしまったんだな……
ゲートバーを押す。
キィ、と一度だけ音が鳴る。
見送りの挨拶とは嬉しいねえ。
▲ありがとうね
……じゃないよ?
ここは屋上だ! 地面まで階段で下りきってこそ!
▲うおおおおおお
▲どどどどどどど(足音)
▲ふおおおおおおおお
▲出たあああああああ
ハハハハハハ!!(高笑い)
諸君! これでこそ東京タワーを味わったと言えるのだ!
私は今、正真正銘下から上まで東京タワーを往復したぞ徒歩で!
フハハハハハ!!
膝も笑っておられる!!(超疲弊)
これキッツいですマジで。
高さとしては函館山を往復したのと同じ。立派な登山です。
ちなみに、STAIRS600開始時に貰いヤバさを察した理由たる『あるもの』とは、
▲認定証
まだ登り切る前からこれを渡されたのは何故か。
……皆様、上りの記録を思い出して頂きたい。
途中に休憩所は無いのは勿論のこと、リタイア口すらありませんでした。
そう、一度上り始めてしまうと、メインデッキに辿り着く以外の選択肢が無いのです。
だからスタートで渡していたんですね。
皆様におかれましては、特にご高齢の方やチビい子供さんと行こうとしている方はよくよくお考え下さい。
▲そいじゃ
赤羽橋駅へポタポタと歩いて行きます。
外はすっかり宵闇。この日は晴れていたので、雲も無く漆黒。
▲ライティングでぬっと浮かび上がる
最初にタワーが見えた「赤羽橋駅から右に五歩」の所に戻ってきました。
時間に関係無く見えている東京タワーは、名実ともにランドマークとしてそこに在るのでした。
正直それで充分のように思います。
とはいえ、それだけでは行かない人が多いのかもしれませんし、そういうテナントを持ってこないとそもそも収益にならないという事情もありそうです。
『塔(※高層建築除く)を階段で上る』というのは、他に探すとエッフェル塔、サグラダ・ファミリア、ピサの斜塔といった御歴々が可能となっております。
しかしスカイツリーには実装されていません。
※厳密には非常階段がありそれを昇ったギネス記録保持者もいるのだが、一般公開されているルートでは無いため省く。
東京タワーでしかできないこととしてもっと推すべきだと思います。運動不足の方にも丁度良い刺激です。
往復すると翌日も膝から音がするようになりますが。
▲東京タワー、さようなら、
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【結論】
筋脚への第一歩!
※極端にやり込むと膝を痛めます。
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【おまけ:総括短歌】
4000t 戦後の希望が聳え立つ その中腹で眺む地平線
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【Staff】
企画・構成 清水舞鈴
撮影 清水舞鈴
編集 清水舞鈴
制作 清水舞鈴
監督 清水舞鈴
【Special Thanks】
『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』
東京タワー
株式会社TOKYO TOWER
メインデッキの設備をめちゃくちゃ楽しんでいた外国人の皆様
STAIRS600に挑み見事踏破された皆様
東京タワーに訪問された全ての観光客の皆様
スペシャルサンクスまできっちりと読む、画面の前の貴方
ところで、もう一つ推したいのがコレ。
▲床面の一部に……
▲隠れ東京タワー
3Fエレベーターホールの灯りといい、東京タワーモチーフが随所に小さく施されているようです。
幾つ見つけられるか挑戦してみては如何でしょうか?
隠れミッキーとか『ウォーリーを探せ』が好きな方はハマること間違いなしです。
因みに個数について株式会社TOKYO TOWERに問い合わせたところ、
分かりません!(汗)
とのこと。
現場からは以上です。
The END.