清水の舞台から縄ばしごで降りる

次回は4月末に更新です。ナンパってまだ生き残っているんですね。

【無知者】古・金石文がぐう可愛いから推す

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▲何て書いてあるかな?

仕事柄参照しまくる本があります。

ハンコ字典です。

 

ハンコの文字しか載ってないのが既に専門書感あってイイのですが、職場には更にオーバースペックな奴があります。

そこにある特定の書体が可愛いので、この度推す所存。

 


 

●脱力ハンコ

ある日、印鑑登録に持ってこられたハンコを見て、うっかり笑いそうになりました。

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▲何これ

私「素敵な文字ですねこれ」

客「そうなの、夫が『ボケる前にいろいろ済ませとけ』って作ってくれたものでね」

私「へえ、旦那様が!」

客「去年死んじゃったんだけどね」

私「ちょ」

 

素敵な年の取り方をしたのであろう非常にお上品なお客様と会話しつつ、頭の中で必死に字を検索。

こいつぁ……アレだな、ド暇こいてる時に字典読みまくってて良かった。

 

私「まるかめ、ですね」

客「ええ、こんなハンコ、お店の人も作ったことが無いって言ってたらしいの」

 

そりゃそうだ。普通のハンコ屋さんなら、まず受けない注文です。

理由は二つ、「読める人が殆どいないから」・「彫るのが面倒臭いから」。

 

客「貴方よく読めたわね。これどういう字なの?」

私「古・金石文です。大昔の文字ですね、今でも未来の人に知らせなければいけないデンジャーなものや記念物には使うらしいですよ」

客「何だか凄い字なのね、これ登録できるのかしら」

私「名前が書かれているなら、問題ありません。これもお客様の名字だと分かったので、このまま手続きを進めます」

 

で、無事に圓亀さん(仮名)の印鑑登録が完了したのでした。

 

印鑑登録できる条件は各自治体によって大分変わるので確認必須ですが、「職員が問題なく読めて」「他の字には見えなくて」「どう押しても変わらない枠で」「その枠が欠けていなければ」大体通ります。

 

そう考えると今回は、受付したのがたまたま金石文を知っていた私だったから通ったようなもので、それを知らない且つ載っている字典の存在を知らない職員が受けてしまったら断られる可能性もあったわけです。

そもそもこんな書体でハンコ作ってくる人がまずいないし、故に古・金石文自体が載っていないハンコ字典もザラザラあるので、確認できないと言われてしまうんですな。

 

こうなってしまうと、お客さんがいくら読める読めると主張したところで「私共には読めませんから(断言)」と一蹴されて終了。

 

そりゃ無いよ、ということで今回上梓することにしました。

皆、古・金石文可愛いから知っておいてくれよな!

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▲ちなみに冒頭の「オーバースペックな奴」がこれ。

以下ここからの引用となる

 

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●読ます気あんのか石文達

日本漢字能力検定1級で覚える羽目になる漢字の数は6000文字。

大漢和辞典では50000字

多分一文字ずつやっていったら読了どころか執筆に寿命を使うので、多いものだけグループで抜粋しました。

 

①あまりにも略しすぎグループ

究極まで省略し「Don't think,feel.」な精神、即ち「何を表したい字か考えろ」と伝えてくる、最も古・金石文らしいものです。

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▲円・環

そうだね、円だからだね。で、円状のものが連なってるから輪っか=環なんだね。

でもこれを続けて書くと、そう例えば某首を食われてお亡くなりになる世界線も存在する魔法少女台詞だとこういうことが起きます。

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伏せ字になったような強烈な違和感。

導かれた先で何をされるんでしょうか。

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▲曲・机

曲がってるねとしか言い様の無い容姿、曲。

天板と脚しか書かない、否、それだけで良い、机。

※机に関しては古・金石文によくある手法の「漢字の右だけ書いておく」という側面も。

文字禁止の伝言ゲームか何か?

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▲雲・氷

雲のモクモク感と氷のジャギジャギ感を端的に書いたらこうなったようです。

最初に解読した方はどうやって導き出したんでしょうか?

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▲隣・別

寄り添う二つの人魂ライクな何かと、如何にもくっつきたくない雰囲気が表れたもの。

特に「別」は2020年8月現在(本記事執筆時期)におけるコロナ禍の、ソーシャルディスタンスを保ったハイタッチにも見えてくるのが何とも。

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▲グループ最後はこいつら

この字を作った方に是非お尋ねしたいのですが、本当に書き分け出来てんの?

ちょっと癖字な人が書いたら、全部同じになっちゃうよ。

蟻やミジンコを識別するのとタメ張る嫌さです。

 

②明らかに別の字グループ

「○の篆文に通ず」「○と同字」などと書かれています。

二つは同じ字を使いますよってことですね。

一瞬頷き掛かって「え? 二つの違いはどうやって見抜くの?」 と新たな疑問が沸き起こる。

印鑑登録に持ち込めば、自治体で100%断られます(他の字に見えるという理由で)

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▲現、見の篆文に通ず

現れたものを見る。それは分かる。

だからって王を省くと「見れたものを見る」になっちゃって、もう意味が分からない。

作文苦手な子が書いているようなもの。

ハブられた王様が可哀想。

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▲菓、果の篆文に通ず

果物はかつて水菓子と呼ばれていたが、じゃあ果と菓は同じ意味ですかって。

字を逆にすると「菓物はかつて水果子と呼ばれていた」と空目してそのまま読み続けてしまいそうな文章に。

「成菓物」、「御果子御殿」。駄目押しで「明治製果」。

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▲呪、祝と同字

ギョッとする最悪の組み合わせ。

どちらも元々は跪いて祈る人を描いたもので、由来・状況は似たようなものだっただけに、仲間だと言いたいらしい。

しかし某植物の力を操る少年が仲間の中年男性にやってしまったことのような祝と呪との取り違えは、現代では総スカンというか下手すると絶縁されます。

やっぱ駄目だろこれ。

 

③いい顔グループ

まず知っておいて欲しいのが、口の存在。

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▲口

数学における全称記号にも見えますが、ポピュラーなのは間違いなく顔文字の口でしょう。

故に「口」が良い位置に入っていると、往々にして顔に見えるのです。

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▲あらまあ良い笑顔達

しかし口が無いにも関わらず、何故か顔に見えるものもあります。

左右対称で、目口に見える配置にさえなっていればいいのです。

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シミュラクラ現象で見える見える

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▲性根の悪そうな面構え

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▲最早化け物

デフォルメがメインの四コマ漫画などで使えるものが大勢揃っているのも、このグループの特徴。

表情に困ったらいっそトレースしてみるのも良いかもね!

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▲試しに幾つか作ってみた。

台詞回しでもっと生き生きとする

 

④もう絵でいいやグループ

文字の成り立ちの一つには象形文字、つまり物をそのまま象ることで生まれたという経緯を持つものがあります。

しかし幾ら何でもそのまま象りすぎな、和むものが本グループ。

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▲魚・亀・鳥

幼稚園児が描いたと言われたら信じるレベル。

真上から見た亀、水揚げされた魚。

特に素晴らしいのは鳥。羽毛のふわふわ感とその横顔、二本の脚まできっちりと表現されています。

しかしこれらを遙かに凌駕するのが次のもの。

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▲象・鶏

これ絵だろ。

「余計な図柄が入っている」という理由で、役所が斬り捨てそうな文字。

そう、こんな姿の癖に、文字なんです。

バリ島のバティックに採用されていそうな、素朴で愛らしい姿の癖に。

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▲描いてみた

名前に象や鶏が入っている方は、取引先を和ませる目的で古・金石文がオススメです。

お堅い職業の人相手だと、「ふざけてんのか」と契約を切られると思いますが。

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▲色をつけると、最早イラスト

面白半分にこれでLINEスタンプ制作中です。

 

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【結論】

ゆるくて読めないのが持ち味です。

 

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【おまけ:総括短歌】

将来に残す情報 宇宙へのメッセージにも 使われている

 

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【Staff】

企画・構成   清水舞鈴

撮影      清水舞鈴

編集      清水舞鈴

制作      清水舞鈴

監督      清水舞鈴

 

【Special Thanks】

新常用漢字印章字林

東京印章協同組合(↑の著者)

全日本印章業協会(↑の出版社)

 

燃えよドラゴン

ブルース・リー

魔法少女まどか☆マギカ

巴マミ

魔人探偵脳噛ネウロ

ヴァイジャヤ

 

素敵なお客様

ナイスなハンコを贈った旦那様

スペシャルサンクスまできっちりと読む、画面の前の貴方

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

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▲メモだけでもまだこんなに「!?」な字があるよ

The END.