清水の舞台から縄ばしごで降りる

次回は5月末に更新です。あの電子書籍リーダーに後継者現る!?

【自分語り】骨よいずこ

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▲見かけたら110番

(画像 by Silhouette AC)

お弁当に鮭の切り身が入っていました。

お魚大好きなワタクシ、嬉々として骨ごと食らってやりました。

 

以来、喉に何かいる……。

そこで検査してもらったら、割と大ごとな経験をすることになってしまったので記録に残しておこうと思います。

※この話は、2018年9月中旬のものです。古くてごめんね!

 


 

●入ったね、これ

やっちゃいましたね。

刺さったというより引っかかってます。

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▲多分こんな奴だ

こいつを飲み込んだ直後から違和感がある。

 まあでも、その内コローンと落ちるでしょ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言ってから、一週間経過。

まだいる。

しぶといぞ、こいつ!

朝昼晩の3食×7日=21回も濁流が食道を通過したというのに、何という粘り強さでしょうか。

お前は佐田沈下橋か?

 

……これは診てもらうしかあるまい。

しかし、どこに行けばいいのやら。

 

というわけで『魚の骨 喉 刺さった』で検索。

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いたよ

まさかのデイリーポータルZにいましたよ。

ふむふむ……耳鼻科で……鼻からカメラ入れて口から鉗子……ポッポーしそうになる、と……。

 

ポッポーですか。

 

吐いたらご迷惑なので、何も食べないで耳鼻科に向かいました。

 

●骨探査

病院についたらまさかの番号札で呼び出される系の受付方法でした。

 

というのもこの日・9月22日というのが、インフルエンザの予防接種の時期とダダ被り。

故に予約は予防接種以外受けない、初診だろうが再診だろうが取り敢えず来て待ってろという状態。

そして耳鼻科と注射は子供が医者嫌いになる二大巨頭。

 

阿鼻叫喚の嵐。

泣いてない子供は一人としておらず、他の子供と絵本を取り合って殴り合いに発展するわ、走り回って人に怪我を負わせるわ、退屈だの眠いだの帰りたいだの言って暴れるわ……。

そしてそれを叱ったり落ち着くように促したりするようなまともな親も、一人としていないのでした。

今思い返せば、親は死人だった可能性があるな。

 

さてそんな強制収容所か刑務所レベルで荒んでいる待合室を抜けて診察室に呼ばれたのが、番号札を取ってから四時間後

(もう一回言いますけど、何も食べずに向かってますからねワタクシ)

 

心なしか医者殿が「ああ子供じゃないや、良かった」と言いたげな安堵の表情を浮かべたような気がしました。

疲れが目に見えたので、私も単刀直入に用件をお伝えすることに。

 

医者(以下、医)「今日はどうされました?」

筆者(以下、私)「魚の骨が刺さりました」

医「どういう魚ですか?」

私「鮭の切り身です。長さは2~3cmくらいだと思います」

医「刺さったのはいつですか?」

私「丁度一週間前、お昼ご飯を食べていた時です」

医「どの辺りに刺さっているように感じますか?」

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▲私「ここです」(画像 by Silhouette AC)

医「分かりました。スコープを入れて探しましょう」

 

鼻からファイバースコープをプスと入れ、骨探査開始。

細いので殆ど痛みはありませんが、うっかり鼻をモゾモゾさせると激痛が走る。

どうもヤバい接触エリアがあるようですね。

 

そんな状態で鼻水も若干出つつ数十秒経過。

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▲医「いないですね……」(背景 by photo AC)

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▲私「は?」

衝撃。

いわゆる『のどエリア』には佐田沈下橋が掛かっていないというのです。

濁流で決壊し、食道という下流に流されただろうと。

そ、それじゃあ……この引っかかってるのは何なのよ!?

 

 

 

 

 

 

きっとアレだ。

愁訴だ。

医者が困惑する最強の主観もしくは思い込みって奴だ。

「鮭の骨を飲んだ」という事実から、例えば喉の風邪を「骨が引っかかった」と感じたのかもしれない。

とっくのとうに佐田沈下橋は粉砕されているのだ!

つまりもう心配は無い!

 

サーセンっした! 撤退しましょう。 

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CTコース入りました〜。

 

佐田沈下橋もとい魚の骨だけでCTですってよ奥さん!

しかもここにはCT設備無いから、無料送迎付きでわざわざ紹介書持って大学病院級の施設行くんですって!

何か大袈裟なことになってきたな……。

 

そんなわけで、素敵な運転手のオジサマと共に無料送迎でゆるゆる行くこと、15分。

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▲着きました(写真無いので公式より引用)

英世会クリニックです。

CTやMRIなどの画像診断を主とする医療機関で、紹介書を書いてもらって初めて掛かることができます。 

運転手さんから爽やかに、

 

「荷物はそれだけ? 大丈夫そうだね。茶封筒あるね? それ紹介書だから、入ったら受付に渡すんだよ。後は呼ばれるまで待てば良いから。お大事にね! 骨見つかるといいね」

 

などと施設のハウツー及び後押しの言葉を頂き、施設に入りました。

 

●受付

中の様子ですが、私以外にも待っている方が二人程いて、ゆったりとした印象の空間でした。

受付の方に「○○耳鼻咽頭科から紹介された清水と申しますが……」と茶封筒を渡し、医師に連絡してくるので待つようにと微笑まれて待機。

 

同じ受付の空間にあった水槽が気になってしょうがない。

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スマホで取り敢えず撮った奴ですみませんね

この澄んだ水! 美しい砂!

特に魚達の隠れ家と美観を兼ねた石のモチーフなんざ、一個置くだけで景色が完成する奴は高いんですよね……。

 

泳いでいるのもカクレクマノミとナンヨウハギがメインという、ファインディングなそれを彷彿とさせるテーマ性を感じさせる混泳になっていて溜息が出ます。

 

それと、ちょっとしか写ってないけど水槽台がシックで素敵……と思った貴方。

これ水槽台じゃないですよ。

オーバーフロー水槽(※)ですよ、激ヤバでございます(語彙力消滅)

海水魚飼育用に開発された「水槽台を兼ねた巨大なフィルター」。圧倒的な浄化能力と尋常ならざる高額を誇るため、ここまで用意しているのは施設か、もしくは行きすぎたアクアリウムマニアのみ。アロワナ飼育と並ぶ変態アクアリウム二大巨頭である。

 

と、水槽を思う様愛でているところに、

「清水さ~ん」

お呼びが掛かり、部屋に通されました。

 

医者殿が一人いるだけにしては随分広い空間でした。

もしかすると、謎の機械巨大な人間を相手取ることもあるのかもしれません。

 

医「紹介書を確認しました。魚の骨がのどに刺さったんですね?」

私「はい……」

医「しかしスコープを入れても見当たらなかった」

私「そうです」

医「懸念事項としては、万一にも骨が深く刺さりすぎて、粘膜の壁に埋もれている可能性です。この状態だとスコープでは確かに見つからず、清水さんが抱く違和感に説明がつく。何にせよCTではっきりします。異物は白く映りますからね」

私「あ、あのう~、この期に及んで言うのもアレなんですけど」

医「はい」

私「私の思い込みっていう可能性もありませんか?」

医「それは清水さんの中に、『刺さってたらどうしよう』という不安があるということです。だからこそCTではっきりさせて、『あ、刺さってなかったんだ』と納得していただければ、違和感も収まってくるはずですよ。不調は精神的なものも影響していますからね、それで治れば良いのです」

私「なるほど……因みに本当に粘膜に埋もれていた場合は」

医「手術ですね!」

私「ちょ」

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▲不安をぶち込まれてからやる羽目に(画像 by photo AC)

医者殿との状況確認を終え、スタッフさんに案内されてCT部屋へ行きます。

 

●そしてCTへ 

撮影時間は10~15分と若干かかるからお手洗いを済ませたか、と道中聞かれたので、立ち寄らせて頂きました。

 

スタッフさん(以下、ス)「では撮影します。目を閉じて、体をだらーんとさせてください。あまり動かないでくださいね、映像がぶれてしまうので」

私「はあい」

 

ながーい台に横たわり、滑らかな凹の形をした枕に頭を乗せて、目を瞑る……。

それと同時に部屋の電気が消されたのが、何となく分かりました。

 

私「緊張しますね」

ス「これは何度やっても慣れませんよ~。もし気分が悪くなったり、急にお手洗いに行きたくなったら教えて下さい。中断できますからね」

※二年前なので、伝える方法が何だったのかは忘れてしまいました。手元のボタンを押すんだったかな?

 

10分間のサイレントダークネス。

 

本当に、やることがない。

うっかり頭の中で歌なんか流そうものなら、口がモゾモゾするか体がリズムを取り始めるかしてしまう。

小説の文章ならいいかと試しに『走れメロス』を流してみたら、朗読しているに等しい状態になり口がモゾモゾ。

だめだこりゃ。暇だ。

 

ここで突然ではございますが、『CTの最中に使える暇潰しランキング』を発表致します!

いぇーい!! パチパチパチパチ

 

CT暇潰し第三位:創作漢字

魚偏に◎で「ちくわ」と読んだ最初の人は天才だと思います。

既存の漢字っぽく見せつつ「あれ?」と思わせ、「あ、そういうことかぁ~」となる字を作るのは、存外に頭の体操になる。

個人的には「たいと」みたいな国字の無理矢理感も好きなので、もっとゴミゴミした凄まじい画数の字もノミネートされて欲しいですね。

というわけで一個作ってみましょう。

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▲音:じごうじとく 訓:やろうぶっころしてやる

はい、古いネタですみませんね。

こんなものを送ったら一部にウケるかもしれませんが、即刻切られると思います。

一応言っておくと、「八」時間も酷使されたために起きた「疲」れと「眠」気による「怒」りです。

流石にアニメで「殺してやる」は言ってませんでしたね。

 

CT暇潰し第二位:創作星座

かつて述べたように、星座はスケールのでかい模式図であります。

貴方がそう思えた・見えたのなら、どんな形を夜空に描こうが自由!

そして星は無数にありますから、如何様にでも記すことができるのです。

私も一つやってみましょう。

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ベネット座(元画像は知人から送られた。多分拾いもの)

あのシーンのインパクトが強すぎて、本編をろくに見ていない私でもこいつのこと知ってるっていう。

野郎オブクラッシャアアアアアアアアアア!!

 

CT暇潰し第一位:瞑想

脳内にもわぁ~んとヘミシンクでも流しながら、CTを受ける己の姿を上から見ているという想像をしてみます。

暗い部屋の中、謎の機会に頭だけすっぽり入り、残りはだら~んと横たわっているだけの自分。

それを想像する自分。

なかなかのシュールです。

更にそれをもっと上から見ていると考えてみる。次はもっともっと上。最終的に宇宙から見ているつもりになってみる。

……音の無い、真っ暗な世界という意味ではCT中も宇宙も同じです。

ということはCT=宇宙ではないでしょうか。

つまり自分は今、宇宙にいると言えるのではないか?

衝撃! 宇宙飛行士にならなくとも、宇宙に行ける!

 

……と、ランキングを頭に流している間に、

 

ス「はあいお疲れ様でした、終了です~」

 

CTが終わりました。

ええ、暇すぎたので脳内コーナー作って遊んでましたよ。

 

ス「結果はすぐに○○耳鼻咽頭科に送ります。送迎の手配をしますので、受付にてお待ち下さい」 

 

何とも、至れり尽くせりです。

その後、ものの五分で車が回され、来た時とはまた別のオジサマ運転手さんと軽妙なトークのやり取りをしつつ耳鼻科へ帰投しました。

 

「CT暇だったでしょ! あんなの受け続けなきゃいけない状況にはなりたくないね~。でもMRIよりは良いよね、MRIは30分掛かるからさあ」

 

へえ~。

……え、30分

 

●結果発表

医「お疲れ様でした。早速届いた画像について診断を下します」

私「はい(ドキドキ)」

 

 

医「骨は、ありませんでした」

 

 

私「……ひょ?」

医「見当たりませんね、骨」

私「無い? 本当に?」

医「ええ、ありません。これをご覧下さい」

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▲医「もし骨があれば、こんな感じで映ります」

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▲医「しかし実際はこうでした」

医「一週間経過していることと鮭の切り身の骨であること(柔らかく、両端が丸い)、そして画像の結果を見るに、骨は刺さることなく通過し既に消化されているでしょう」

私「やはり私の思い込みだったんでしょうか」

医「何とも言い難いですね、腫れなどは見られませんでしたから……。しかし、念のために病院に来た姿勢は素晴らしいですよ。これで本当は刺さっているのに『一週間も経ってるんだからきっともういないはず』と放置していたら、更に大ごとになったんですから」

私(手術のことだな……)

医「何にせよ、何も無くて良かった。また不調があれば、いつでも確認しにいらして下さいね」

私「お世話になりました」

 

料金:初診料+診察代+CT代=9000円程度(ちーん)

万は行きませんでしたけど結構しますね。諭吉一人消えたし。

魚の骨如きで四桁後半ぶっ飛ぶなんてと思いましたが、しかしこれで手術をやったら更に数万飛んだはずです。

CT経験と無事の確認を考えれば、まだ安い方なのか……。

 

 

いや待て。

 

 

骨食べなきゃそもそも0円だったんだよな。

 

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【結論】

良く噛んで食べましょう。

食べられない部分は避けましょう。

 

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【おまけ:総括短歌】

その小骨 魚の最後の抵抗か 最悪手術だ 魚骨性疾患

 

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【Staff】

企画・構成   清水舞鈴

撮影      清水舞鈴

編集      清水舞鈴

制作      清水舞鈴

監督      清水舞鈴

 

【Special Thanks】

佐田沈下橋

高知県四万十市

 

『魚の骨が刺さった話』

玉置標本氏(↑の執筆者)

 

英世会クリニック

医療法人社団 英世会

 

創作漢字コンテスト

コマンドー

 

全ての医者の方々

制御の利かない子供と疲れた親御さん達

無料送迎のナイスな運転手の方々

美味しい切り身になってくれた鮭の皆様 

スペシャルサンクスまできっちりと読む、画面の前の貴方

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところで、何故今更二年前の話をしたかというと、この9月にまた骨がぶっ刺さったからです。

こちらはくしゃみをした弾みで、食卓の向こうにすっ飛んでいったので無事で済みました。

で、二年前にも魚の骨で一悶着あったのを思い出したというわけです。

 

何も学んでないよオイ……。

「小骨如き、スルッと落ちるだろ」と思っちゃダメですね。

ガラス片を嬉々として飲み込むに等しいと思わないと、本当に手術する羽目になるよ……。

The END.