6月号をご覧頂き、ありがとうございます。
あの記事の最後の一文を見て本当に来て下さった方、もしくは検索で辿り着いた方へ、2月29日当時の別所線の状況をお見せします。
本記事は3月に執筆しています。
公開に伴い最後に6月末日現在の別所電鉄の状況を追記しています。
●新幹線の時間まで散策しよう
2月29日、10時。
ナイスなホテルからチェックアウトしましたが、新幹線は12時半のものを予約してしまっています。
2時間以上あるので折角だから千曲川の景色でも見ましょう。
▲わあ綺麗だなあ
▲……?
▲あれ?
お恥ずかしい話、台風19号でこの橋が崩落していたことを、この瞬間まで忘れていました。
他人事とは正にこのこと……身近に多摩川を抱える自治体に住みながら、よくもまあ忘れていられるもんです。
●19号の爪痕
土手をぽたぽた歩いて行くこと数十秒。
▲踏切もご覧の通り
▲通行止めにされている
▲向こうには
▲ブルーシートが
▲何カ所も見える
電車が来ることが絶対に無い今、地元のクソバカが踏み行って遊びそうな程、それはそれは見事に真っ直ぐな線路でございます。
本来なら上田駅から別所線に乗った旅客が、束の間千曲川の美しい風景を見ながら温泉に思いを馳せる場所なのでしょう。
▲罹災部分をフレームアウトさせると秀美なんだが
戻って手前の上田橋を渡ることに。
上田市内で一番古い橋であるここは無事だったんですね。
▲橋中腹より上流を臨む
▲何度見てもやっぱり崩れてる
▲今度は下流を見るが、ここでは特に被害は見えず
▲「左折禁止」
▲流れ着いたか、作業のためわざと積んだか、大量の砂
▲上田橋終わり辺りで作業風景がまざまざと分かる
本人達は見世物のつもりでやってるつもりは絶対に無いと思いますが、記録で何枚か撮らせて下さい。
▲崩れて転がり着いたらしいブロックを
▲一つずつ黙々と掬い上げているショベルカー
▲反対側の置き場にゴロンと……その後どうすんだろうか
▲こちら下流の様子
▲堤防の土が削り取られ、露出している諸々
先程のショベルカーが運んでいた十字のブロック、これだったんですね。
上流からというより、この辺りで使われているブロックが出てきてしまったのか。
▲奥の土手と比べると被害が明確
▲砂を掻き集めて運んでいるショベルカー
最も水辺に近い手前の一列が崩れかかっています。
ここも再建しなくてはいけません。
▲とはいえこの上田橋も実は無傷では無い
▲橋の名を記した石が
▲ヒビ入ったので鉄線で固定
台風のせいなのか元々老朽化してたのかは不明ですが、何にせよ危険な状態。
もし後者ならよく持ちこたえたものです。
で、ここから右を向いてみると、
▲当然ながらこの先は全員進入禁止
「ちょww台風やべぇwww」みたいな信じられないレベルのふざけた精神だろうが、神妙な面持ちと心構えであろうが、作業員以外の人間はいても邪魔なだけなので立ち入り禁止です。
▲ていうか行ったら足下崩れるだろこれ
行く理由が見当たらないので、大人しく手前でぼんやりと作業風景を見る……。
▲中途でプッチリと切れた橋
これを「新しく電車を通すために建設中」と偽って人に見せたら騙せるであろう程に切れてます。
▲なお2019年10月の様子(撮影者:Qurren氏)
寧ろ崩れたのが何故そこだけで済んだのか不思議です。
土手が削られ、支えきれなくなって落ちたように見えるので、橋そのものが損傷したわけではないのかも。
▲ふと対岸を見やると、
さっきの踏切で一時停止する車が
向こう一ヶ月くらいは電車が通ることは無いのに、それでも通る車通る車全員が律儀に止まります。
車によっては窓を開けるものも……踏切の音は鳴らないのに。
●上田駅にて
どれくらい経ったのか、と時計を見ると、もう1時間近くここにいたことに気付きました。
この現場まで上田駅から徒歩10分くらい。
戻って土産の買い残しが無いかを探すなら、そろそろ戻った方が良いでしょう。
ゆるゆると歩いて戻る道中、数ある自治体の掲示板に貼られたイベントのポスターが「中止」や「延期」のシールで雑に封じられていました。
この時期、新型コロナが本格的に大騒ぎになってきた頃で、行事やイベントが悉く潰されていたのです。
その中に、別所線のポスターがありましたが、こちらはコロナとは全く無関係に「上田~城下駅間は代行バス」というシールもしくは手書きによって上塗りされていました。
先程の崩れた赤い橋から5分程度南下すると城下駅に着くのです。
▲上田駅に戻ってきた
この写真は出口「お城口」サイドから撮影したもので、真反対にもう一つの出口「温泉口」があります。
その温泉口は静かで、あまり人がいません。
▲別所線への連絡口なんか人っ子一人いない
如何にも温泉地っぽい深い色合いの暖簾が掛けられ、提灯や吊り飾りで雰囲気がとても良いというのに、今は物悲しくそよ風に揺れるだけです。
▲奥にはこんな娘達が
この娘達は元々、存亡の危機に立たされている別所線をアピールするために一肌脱いでくれている存在。
左が北条まどか氏(別所線)、右が八木沢まい氏(鉄道むすめ)。
萌えだけでなく普通に女子受けしそうなキュートなデザインであるだけに、かつてはここで写真撮影していた人もいたんだろうかと思いを馳せざるを得ません。
立ち尽くしていたところへ、「今はバスだからこっちですよ」と他のお客さんに声を掛けられました。
いかんいかん、誤解させてしまう。
「あぁーそうでした、ありがとうございます」とだけ答えて、立ち去りました。
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【結論】
いつの日か温泉へ連れてってくれ、別所線よ。
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【おまけ:総括短歌】
潰れるな ロケ地・温泉への前途 地元の交通 丸窓電車
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【Staff】
企画・構成 清水舞鈴
撮影 清水舞鈴
編集 清水舞鈴
制作 清水舞鈴
監督 清水舞鈴
【Special Thanks】
工事現場の皆様
このページまできっちりと読む、画面の前の貴方
●終わりに:六月現在の別所線
ここに記載されている通り、土手が削られたことで橋梁の足下が覚束なくなり、崩落したようです。
ものの3日で代行バスを走らせる決定を下して運行開始、1ヶ月経過して崩落箇所以外の掃除が完了したのか代行バスを最低限の区間に縮めています。
「代行バスを走らせる」って簡単じゃないですよ。
どの区間までか。何本走らせるのか。料金は幾らか、そもそも取るのか。それをやってくれる業者は。入札の現場も整えて……。
しかもそれと同時進行しなければならない台風の後片付けもあっただろうことを考えると、3日で運行にこぎ着けたのは尋常ならざる速さです。
運休時はそもそも走ってもらうという京王線における京王バスみたいなのがいたのかもしれませんが、それはそれで代行できるまでに台風の瓦礫を3日で掃除したってことです。
しかも市が復旧に向け全面支援を表明したのは1月なので、仮にそれ以前は全く何の支援も無かったとすれば、上田電鉄の底意地が垣間見えます。
この9ヶ月で行われたのは、崩落した堤防の修繕と整地作業及び鉄骨の回収作業である様子。
6月から10月は出水期なので一旦作業を中断するようですが、11月には再び復旧に向け工事を進めるとのこと。
そして2021年春の全線復旧を目指すと。
その時にはコロナも押さえ込めていると信じて、そして開通していると信じて、別所線沿線の観光地・温泉街の皆様も奮闘しています。
どうか、開通したけど観光地が死んでいるとか観光地は持ちこたえたけど開通できませんとか、そんな悲劇にだけはなりませんように……。
The END.