▲無惨
職場で管理されている紙幣を一枚ベリベリにしてしまいました。
ATMに入れて同額を引き出すという力技で手軽に交換しようとしましたが、
紙幣をご確認下さい。もう一度入れ直して下さい(要約:こんなボロいの入れんじゃねーよ)
と拒否されてしまいました。
取り敢えず自前の紙幣と交換して職場に返すことで始末書は免れたものの、さて、どうしましょうねコレ。
●解決を探る
どうしようとか言ってらんないので、「紙幣 交換」で検索。
確か紙幣は破れてロストした量に応じて交換の可否や額面が変わったはず。
その窓口って近場の銀行ならどこでも設けているのかしら。
▲ダメッぽい(引用元:財務省)
日銀か。
以前2000円札をスノードームにした時に、ヘンテコな質問を電話でして業務を邪魔しましたが、まさかまた関わり合うことがあるとは。人間万事塞翁が馬(意味不明)。
▲交換レートも書いてある
どうやら私の愚行の産物は満額で交換できそうです。
ちなみにテープ等で貼り合わせても、機械を通せない(通した時に千切れて詰まる)ので自販機やセルフレジには使えないし、有人レジでも交換の手間から受取拒否されることになるのでまともに使えません(※実体験)。
大人しく交換した方が早いですね。
●まさかの制度
上記参照ページに、交換窓口のリンクがありました。
早速開いてみる。
▲更にリンク?(引用元:日本銀行)
概要が書かれ、その下に外部リンク。クリックすると、
▲やっとだ
直でこのページに飛ばせばいいんとちゃう?(関西)
何処の世界にも根拠大好き君(クレーマー)がいるからか、ご丁寧な説明ページを踏んでからでないと受付に行かれないようにした可能性があります。
気を取り直してページをスライドする。
行ったらすぐ出来ると思ってる君(調べない系自己中)向けにしっかり記載されていますね。
要は「あなた……『覚悟して来てる人』……ですよね。『予約しないで』来ようとするって事は逆に『後回しに』されるかもしれないという危険を常に『覚悟して来ている人』ってわけですよね……」ということです。
▲日銀ジョルノ説
(ジョジョ第5部より引用しつつクソコラを施しました)
日銀の隣に住んでるならまだしも、筆者は東京郊外在住。
交通費をJR東日本に納めるだけの外出をするつもりはありません。
大人しく予約しましょう。
▲来店希望点を日銀本店にしてっと
▲あら、土日祝日は無いのね
予約できるのは平日9時3時だけでした。団体VTuberの姉妹グループかと思いました。
遅めの夏休(R6.9.13~24)で丁度行ける日をチョイスし、次のページへ。
▲持ち込むモノと状態を伝えて……
(クリック推奨)
▲ログインページとな?
日銀に会員登録する日が来るとは思いませんでした。
人生何が起こるか本当に分からないものですね。他にどんなサービスがあるんでしょうか。通販やってるかな?
▲入力内容を確認し
▲予約完了
後は当日を待つだけです。遅刻厳禁。
●ナマの日銀
▲おはようございます
何故日銀の壁という意味不明な写真を撮っているのかというと、
だったんですね。
そりゃあ、日本国の貨幣経済そのものを握っている日銀の内部なんか撮影された日には、即座にネットに流出して強盗もテロもやり放題になりますからね。
というわけでここからはイメージ画像と公式画像を使用します。
▲日銀アクセスマップ(引用元:日本銀行)
ということで日銀の北口らしき場所に来たは良いのですが、駐車場の入り口のようになっているそこに警備員さん(それも役所や図書館にいるような『ほぼ抑止力にならない名ばかり警備員』ではない、相当に眼光鋭い警備員)が複数人立つという様子。
▲イメージ
北「門」が見当たらないし……これは入りにくい。ズカズカ入って探すくらいなら声掛けた方が早いし絶対怪しまれない。
すみません(超小声)
ハイッ、どうしましたか?
お札交換で……予約はもうしてて……(挙動不審)
そうでしたか! こちらですよ~
ぱっとにこやかになる警備員の皆様。
ご案内されていくと、スロープがありその先にも警備員さん。その方が私を引き継ぎ、中へ連れて行く。
▲実際よりもやや仰々しいイメージ
空港か?
手荷物検査と金属探知ゲートの通過を指示されたので、しっかり受けました。
更に別の警備員さんに引き継がれ、フロアに進む。
今日はどのようなご用件でしたか
お札の交換です
分かりました。お金の交換はあちらの27番窓口です。警備員がいるところの、更に奥、その左手です
ありがとうございます
ソロソロと歩みを進め、窓口手前でそっと振り返る。
▲何でこんなドンピシャなイメージがあるんだよ
おるわ。
たかが一人、されど一人。厳戒なる監視の目が光る。しかもそれぞれ会釈するとしっかり返して下さる。
礼儀かと思って気にも留めていませんでしたが、多分「お前を見てるぞ」という意味合いです。
さて、27番窓口に辿り着きました。
▲あくまでもイメージなので字を雑に入れました
『損傷通貨交換』ではなく『いたんだお金の交換』との表現に、恐らく日銀で一番市井に利用されるのはココなのだろうと察します。
横には「㉖現金の受払」「㉘手形交換」と法人が関わると思われる窓口。一階で大半の手続きが終わるようになっているみたいです。
目の前の長椅子にちんまりと収まる。
平日午前中でも他に三人ほどお客さんがいました。しかもどう見ても私服。
やったのか、貴方がたも(勝手な仲間意識)
予約していたこともあってか、ものの数十秒で呼ばれました。
本日は紙幣の交換ですね。こちらにご提出願います
▲破損5000円札現物(偽造防止字幕入)
どのような経緯によるものでしょうか?
(゚Д゚)
経 緯 を 聞 か れ る
これ今思えば当然で、例えば硬貨を『週刊少年ジャンプ』で潰してペラペラにするといった意図的な破壊行為の産物だった場合、交換どころか即お縄なのです(※貨幣損傷等取締法を参照)。
出してその場で交換して帰ると思っていたワタクシ、恐々としつつ白状する。
書留の袋を開ける時に、一緒に引き破りました……
承知致しました。では、こちらの用紙にご記入頂きます
お札が回収され、引換申請用紙が差し出されて記入内容を指示されます。
・『経緯』:「封筒と一緒に破った」
・『項目』:「破れ」
・『金額』:「5000円」
当初の予約ではよく分からず「切断」を選びましたが、確かに「破れ」ですわ。
そして用紙の最後。
・『交換にあたり内部で行われる精査について干渉しない』:要署名(名字のみ)
貨幣・紙幣の交換にもれっきとした法律があるのだから精査結果に文句などあるはずもないし言ったところで時間の無駄なのは分かりきっていると思うのですが、それでも額に納得できずごねる人っているんですかね?
さらっと署名して、
▲銭湯の下駄箱の鍵にくっついてそうな
紺色のプラスチック番号札を渡された
(勿論イメージ)
暫し待機。
……奥からジャラジャラガチャガチャと騒音が響いてくる。
見ると複数人がテーブルを取り囲んでいます。どうやら大量の貨幣を広げて作業をしているようです。
年季の入った謎の木箱を取り出して何事か話しています。
こういう『中の人にしか分からない、想像もつかない専門的な作業』って遠目に見ててもワクワクしますよね。図書館で書庫へ入っていく司書さんとか見てて「いーなー」って思ったことありませんか?
勝手に観察していると、女性のみ深緑のエプロンをしていることに気づきました。何でだろ?
▲色味はこんなイメージでした
男性はポロシャツや普通のシャツなど様々ですがエプロンはしていません。たまたまかな。
やがて数分と経たず深緑エプロンさんに呼ばれ、ワタクシは無事に満額交換して頂きました。
▲案の定『子ども銀行券』にされた(偽造防止字幕入)
正直、この新札なら「どうだ、明るくなったろう」と燃やしても全く惜しくない。
技術は最高峰ですけどね。技術「は」。
さて、用事は終わりました。
さっさと帰らないと、警備員の皆様にとても怪しまれるでしょう。
▲さっきからずっと見てるしな
帰り支度をしながらそっと辺りを見回すと、背後にも窓口が並んでいました。しかしそこに向かう人はおらず、凡そ馴染みの薄い手続きを司っていると思われます。
上階へ続くエスカレーターも見えましたが、特に『↑○○のお手続き』といった案内板も無いので、行き先は恐らく「内部」です。
入り口近くにはこれまたレトロな書体の案内表示がありまして、
▲思い出しながらイメージにしました
なるほど。
もし身近にやたら日銀に行っている人がいたら、国債や官庁関係の職に勤めているか危険運転常習者である可能性があります。
後は『報告省令レート』なるまず聞かない単語と両替レート的文章が書かれた告示が張り出されていたり、偽造貨幣に関するポスターが方々に貼られていたりと、日銀だからこその掲示物が何枚もあって大変興味深かったのですが、永久に警備員さんが横にいるのでメモったり許可を取って撮影したりなんてことはできませんでした。
▲残念だったので、出てきて撮ったのが壁ってワケ
とはいえ予約さえしてしまえば(勿論混み具合や交換をお願いしたい量によってはその限りではないでしょうけれど)、極端に待たされる・法令を一から調べるのでまた明日等といったことにはならないのは助かります。
最悪予約しなくてもご対応はして頂けるようなので、震災に遭い、家を片付けていたら損傷貨幣が出てきてしまったという方は是非とも諦めず交換に行って下さい。
▲日銀の支店でも交換できるよ(引用元:日本銀行)
●おまけ:『貨幣博物館』初来訪
▲名残惜しくて周りを歩いていると
▲おや
ADMISSION FREE(入館無料)
マネーの博物館で、マネーを取らないとはこれ如何に。では遠慮無く。
こんにちは。館内の注意事項を説明します
・荷物検査を受けること
・特定のエリア以外撮影不可
・一階全域以外飲食禁止
・二階には冷水機があるので、水分補給はそれで
▲またあるんかい!
通貨が関わる以上、当然ですね。
2階に上がると俄に賑やかな声が響いてきました。
小学生くらいの私服子供さんグループと、中学生くらいの制服グループが幾つか。
東京(しかも特別区)へ修学旅行や社会科見学で来るのは何処の学校だろう? 埼玉・千葉辺りかな。
彼らが盛り上がっていたのは何かというと、
▲一億円持てるかな
総重量10kgとのことで、子供達が立ち去ってから触ってみる。
重っ……ん? 待てよ、10kg?
▲私の愛車(7kg)より重いやん
(※この自転車については後日お伝えします)
自転車より重い金って何。
成金はこんなものを沢山抱えて……いや、違うわ。もっと規模のデカいやつあった。
国はこれを110万個運用してる(※日本の国家予算は2023年から二年連続で110兆円台)。
総重量1100kg……あれ、重さに換算したら大したことなくなったな。ヒノノ二トンより軽いわ。
私は何が言いたかったのでしょうか(混迷)
気を取り直して展示を見ていきましょう。
▲こちら、意味深な壁掛け。フラッシュを焚くと……
▲資料写真が浮き出てくる!
道理で荷物検査してる間に何度も二階から光が瞬いてくると思ったよ。
分かりやすく纏められた映像を見るコーナーもあり、お金の役割や流通する条件を記憶に刻んでくれます。
さて、撮影禁止の常設展示を見に行きましょう。
入って目の前に『ここにあるものは全てお金です』の文言と共に代表的な「歴代のお金」が纏めて展示されていました。
▲どうにかしてイメージにしました
『子ども銀行券』
再 臨
まさか新札になる度に差し替えてる? 丁寧に新札をアピールしていく。
▲と思ったら特別展示の一環でした
展示には NHK大河ドラマ『どうする家康』のもじりらしき説明文があったり、金と人生の結びつきが娯楽に発展したことを示す「長者双六」の項に『人生ゲーム』を持ってきたりと、随所に遊び心が感じられます。
体験コーナーでは千両箱や銭差し、大判の重さを持つことができ、『買い物体験』なるイライラ棒で遊ぶことも可能です。
貨幣は身近なものなので、博物館としての高尚さよりも庶民派の表現を敢えて使ったのかもしれません。
日本史を専攻した方なら聞き馴染みのある単語(蓄銭叙位法、金本位制、松方デフレ)がザラザラとある一方で、人参代往古銀(朝鮮人参購入専用の高純度銀貨。当時朝鮮人参のニーズが高かったものの銀貨の質が悪く、朝鮮人参の売り手に嫌がられたため)というあまりにもピンポイントな役割を持った貨幣等、間違いなく皆様がご存じでないものが一個はあるだろうという展示の充実ぶりには驚きです。面積ちっさいのに凄いな。
それから「銭貨40枚の模様を描き留めたお坊さん」は現代の収集家・コレクターですし、青い紐が通された大量の銭の側面が揃った「青ざし」は贈答用=今で言う御祝儀のピン札と、現代まで連綿と続く価値観や文化を感じることも多々。
また、通貨の価値は即ち世のバロメーターであるからして、風刺画や作品も多数並んでいます。
それだけ通貨は人々に浸透しており、直接生活に関わってくるもの故に人々が注目していたのです。
外国の様々な時代の貨幣も展示されていて、
▲これは撮影可能範囲にいたデカいヤツ
▲ヤップ島(ミクロネシア連邦)のだって
戦時下のものやハイパーインフレ時のものもあり、背景やその後の時代を考えると嘆息せざるを得ません。
身近であり、僅かな変化で市井がざわめき、人を生かすことも殺すこともできる恐るべき存在。
改めてこれだけ並べ立てられると圧巻です。
これはなかなか良い物を見られた。
折角だからお土産でも買っていきましょう。
▲先程の一億円体験の横
▲ん?
まさしく、「らしい」土産。
どうやらワタクシがやらかした旧5000円札等もう使わない・使えない紙幣は一部グッズに変えて、新たな価値を創出しているようです。
実物は是非現場でご覧頂くとして(※撮影すると普通にマナー違反。店員さんに許可を取りつつ商品撮影は避けた)、マイクロシュレッドされた独特の風合いのある紙片がぎっしり詰まった様は唯一無二のオーラを放っています。
……これさ、買って中身出して繋ぎ合わせたら日銀で交換できちゃうんじゃないの。
▲これなんかたっぷり詰まってますよ、大丈夫?
▲アッハイ
こんな注意書きが添付されているとは、同じ事考える愚か者がどうやら過去にいたようですね。
皆様におかれましても、そのような愚行は考えもせぬようお願い申し上げます。
▲というわけで購入したのはこちら。
表紙にエンボスが使われていて中々に重厚
なお、撮影禁止になっている最大の理由は偽造防止のためです。
この図録に載っている写真の数々も、無断転載・引用すると偽造に使われてしまうため断固禁止となっております。
現地まで行かれないという方は、デジタル上でこの図録を読める(※印刷不可、スクリーンショット厳禁)のでご参照下さい。
----------
【結論】
いつでも使える。
やらかしても交換できる。
交換後も使い道がある。
----------
【おまけ:総括短歌】
おバカでも老若男女誰にでも外国人でも使える 貨幣
----------
【Staff】
企画・構成 清水舞鈴
撮影 清水舞鈴
編集 清水舞鈴
制作 清水舞鈴
監督 清水舞鈴
【Special Thanks】
貨幣博物館
ジョルノ・ジョバァーナ(『ジョジョの奇妙な冒険』第5部より)
ANYCOLOR株式会社(↑の運営会社)
古沢良太氏(『どうする家康』原案・脚本)
株式会社タカラトミー(『人生ゲーム』登録商標保持者)
写真AC
シルエットAC
撮影許可を下さったスーベニアショップの店員さん
スペシャルサンクスまできっちりと読む、画面の前の貴方
▲ちなみに日銀の会員期限は半年
END.