▲海に塗れる二千円札
職場で二千円札が手に入ったので、絶対使わないよう保存することに決めました。
その結果がこの写真です。
何だと思いますか?
●答え:スノードーム
タイトルにめっさはっきり書かれてるのでクイズにすらなってないんですが、そうです、スノードームです。
職場で二千円札がレジに入っていて、会計係がお金の計算してたので、千円札二枚を持って近づいたんですよ。
「激レアなヤツじゃないっすか……両替してくださいよ……!」
ワタクシ、人生で生二千円札見たことなかったんです。
後でその様子を窓越しに見ていたらしい同期から「二千円札手に入れて……嬉しかったですか?」とニヤニヤされました。
(※レジの金とポケットマネーを両替すると、何処かで計算が合わなくなった時に疑われる。故に私の職場では推奨されない)
さて、手に入れた二千円札。
使うつもりは毛頭ありません。
二千円払って『二千円札』を買ったのです。
で、七味をcrystallizeしてる、美しさに嘆息すれば良いのか脱力すればいいのか、そのキワキワを攻めてる記事を見つけて、これなら永年保存できると確信。
東急ハンズに行って、材料を買ってきましょう。
▲よし、作ろう
外出って大事ですね。
一ミリも考えていなかった方向転換をすることになりますから。
というわけで今回は、『これも保存と言えますよね』。
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●作り方
WARNING!!
これから使うコーティング剤は有機溶剤です。
見易いように素手で取り扱っていますが、出来れば何かしら手袋など付けて作業をしてください。
また、揮発すると下に向かって臭いが流れていきます。
マンション・アパートの方は外で、一軒家の方は一階で行うか、二階以上で行う場合は一階の窓を全開にするなどして、十二分に換気をしましょう。
用意できるのなら防毒マスクをつけ、「うわ~マジックペンの臭い~」などとふざけて嗅がないように。
大量吸引した場合は、極端な話、死にます。
▲デザイン画がこちら。
今までで一番早く描けた(雑だから)
▲①まずはモチーフを作ろう
▲セルロースセメントに
▲二千円札どぼーん
▲かたつむり並にゆっくり引き上げ
▲そのまま二時間乾かす(乾かし方はこちらを参照)
▲今度は逆さまにしてどぼーん
▲引き上げ
▲二時間放置。これでワンセット。
もうワンセット行い、終わったのは夜八時
▲②台座に砂をつけていこう
▲瞬間接着剤を塗り
(※以前の記事で購入した水中用瞬間接着剤を使用)
▲砂ばさー
▲ちょっとだけ押さえる
▲余分な砂を払う
▲ついでにドームの中に砂を入れておこう
▲③ゴム蓋にモチーフをくっつけよう
▲ホットボンド盛って足を固め
▲継ぎ目に砂をまぶす
(水中用瞬間接着剤を塗ると綺麗)
▲④ゴム蓋をはめ込んでいく
▲モチーフが取れないようにぐぐっと
▲⑤水を入れよう
▲精製水5:グリセリン1でとろみ強めにし
▲青い食紅で海の色を付ける(濃すぎた)
▲こんなスプーンついてるのね、初めて知った
▲ゴム蓋を押しのけて口を差し込み
▲チュイー
▲びっくりするほど足りなかった
▲買った
▲総水量約1.4リットル(驚愕)の跡
▲⑥台座をつけて
▲完成!
早速使ってみました。
▲逆さにして……
▲ズシャー
動画撮る暇もなかった。
これこそ海中の様子と思い直すことにします。
今にも潮騒が聞こえてきそう。
今までの工作の中で、(砂の舞い方以外は)一番想定通りの美しいモノができました。
▲ワタクシが満足なので、これでいいのだ
▲あ、この姿についてはいつかお話ししますね
なお、本番の前に、コートでお札の印刷が溶けないかどうかを実験しています。
▲その産物。千円札を四回コーティングした
▲当初は対角同士を結んだデザインの予定だった
▲入らなかった
流石水濡れしても全く揺るがない印刷。
コーティングを繰り返されても美しいままです。
▲ついでに水張った手桶に
一週間突っ込んでみたが、平気の平左
しかしどうしようか、この千円。
●何で黒塗り?
ところで、皆様は今までの画像を見て、違和感を抱きまくりましたよね。
何でお金の部分だけ真っ赤なのかと。
ちょっとだけ法律の話をしましょう。
日本は貨幣損傷等取締法と通貨及証券模造取締法という、今回の工作における重大な法律を抱えています。
前者は「硬貨を使えなくしたらお縄」。
後者は「お札っぽいもの作ったり販売したらお縄」という意味で、準用(=法律を、法律に明示されていない部分にも適用)すると「お金の画像を公開したらお縄」です。
お金を使ってなんやかんやするだけでなくネットに公開するとなると、当然この法律は知っていなければなりません。
知っているべきっていうか知らないとは言わせない。
で、法律及び準用範囲なども確認するため、
財務省理財局
に取材したのでした。その結果が赤塗りだったというわけです。
取材内容は主に、
①この二千円札は今後一切使えなくなるが、それは法的にどうなのか
②インターネットに公開する際の注意点はあるか
③そもそも二千円札はどうしてこんなに珍しいのか
です。
それぞれに、メールや電話でお答え頂いたので、ご覧下さい。
【国立印刷局:メール】
《①》
直ちに違反するかは判断できません。財務省理財局に聞いてみて下さい。
今後使う予定がもし一ミリでもあるなら、加工しないで下さい。
ATMで使えなくなったり、偽札と見分けられなくなったりするからです。
お札は皆で使うから大切に扱ってほしいですね。
《②》
通貨及証券模造取締法により、「それっぽい」見た目のものは製造禁止です。
画像を載せるなら斜線や「見本」の文字などを入れるなど対応して下さい。
程度によってはお縄になります。
これもどの程度かは財務省理財局に確認して下さい。
《③》
あくまで私達は製造機関なので、発注されない限り作りません。
なぜ発注しないかは、日本銀行に確認をお願いします。
なお、日本銀行が公開している銀行券発注高を見ると、平成十六年度以降の発注はなされていません。
【財務省理財局:電話】
《①》
厳密な意味でこれを取り締まる法律はありませんが、推奨はできません。
(※財務省=お金における国の立場を表す部署なので、「いいですよ!」とは口が裂けても言えないのだと思われる。一旦個人に許すと、それを前例として錦の御旗ばりに行使するおバカちんが必ず出現するから)
《②》
モザイクや黒塗りをすれば、確かに法律にはかかりづらいと思います。
ですが、もし可能なら、載せないでほしいですね。
(※これも同じ。「ちゃんと処理してくれるなら載せていい」とは言えない)
《③》
馴染みが薄く、使いにくかったのかもしれません。
海外にはミドルやクオーターがあるので、使いにくいということはあまり無いと思っての発行だったのですが……。
(私)――お忙しい中ご回答頂きありがとうございます。最後になりますが、こういう質問は割とありますか?
ありますよ。お札折り紙の作品などで、たびたび。
(私)――そうでしたか。ありがとうございました。
【日本銀行:電話 ③のみ】
※①・②は法関係なので聞いていない
二千円札が普及しなかった原因としてはいくつか考えられるところがあります。
まず、日本の治安がトップクラスで良いということ。
海外、ことにアメリカだと、クオーター(25セント)などのミドル硬貨、言うなれば「中途半端な額」の貨幣が普及しています。
思うにこれは、治安の悪さが原因ではないでしょうか。
治安の悪いところで、お財布に一万札をポイポイ入れた状態で歩けますか?
すぐに襲われ、盗難に遭い、一瞬で一万円が何枚も消え去るんですよ。
だからなるべく小さい額に分散させ、必要な分しか持ち歩かない。
そういう点においては、日本はまだ安心できます。
恐らく国民も、そう思っていたのかもしれません。
五千円札や一万円札を平然と取り扱えるというのは、無意識に「盗られる心配は無い」と感じている、その証左ではないでしょうか。
次に、二千円札を使える機器が無いという点。
実は発行された当初、二千円札を扱う自動販売機・券売機も作られ、設置されていたんです。
しかし国民の間で二千円札があまり使用されていないということに気づくと、メーカーさんは思うわけですね。
「四種類のお札に対応したセンサーを乗せるより、三種類だけ見分けられるセンサーを使った方が安上がりだ」
やがて二千円札対応機器が姿を消していくと、二千円札を持っていた国民も思います。「何だよ、使えないじゃんよ」
そして銀行で千円札二枚と交換してしまう。
最後に、市井の銀行がそもそも扱っていないという点。
今までお話しした要因から、国民に普及していないと分かると、銀行としても扱いたくなくなるでしょう。
謂わば「売れない商品の在庫を、いつまでも会社が持っているのか」という話です。
ところで、市井の銀行と日本銀行とで、貨幣をやりとりする際の手続きがどういうものなのか、ご存じでしょうか?
よく勘違いされるのですが、市井の銀行が「○○円くれ」と言う→日本銀行がそれに応じお札を流すのではありません。
正しくは市井の銀行が「○○円を、一万円札何枚と五千円札何枚と千円札何枚でくれ」と言う→日本銀行が指定通りのお札で渡すのです。
つまり、日本銀行がいくら「二千円札もらってくれないかなー」と思っていても、市井の銀行が「二千円札何枚でくれ」と指定してこない限りは渡せないのです。
強制する権限はありませんし、そもそも「売れないからってせっかく開発したものを捨てるとは何事! 愛情持って普及させなさい」なんて言われたって嫌でしょう。
それこそ市井の銀行が国民に無理矢理二千円渡そうとするようなものです。
(私)――ということは、日本銀行は二千円札を十二分に抱えているんですか?
その通りです。
(私)――実は国立印刷局にも同様の質問をしたのですが、「発注されてないから」との回答でした。てっきり発注していないのは、もう普及しないからいいやと諦めて自然消滅するのを待っているからだと思ってました(笑)
いやー(笑)、在庫が、市井の銀行全てから注文を受けても問題ないであろうレベルでこちらにあるものですから。
(私)――ということは、ほかのお札と同じ量だけあると……。
それは機密なのでお答えできませんが、「たくさんある」というのは確実です(笑)
(私)――父から、○○銀行(噂レベルなので名は伏せ)に行けば二千円札をすぐ出してくれると聞いたのですが、一部銀行では積極的に扱っているのでしょうか?
扱っていただいているところはありますね!
特に沖縄県の金融機関は普及に積極的です。
お札の表には堂々たる首里城の門が描いてありますから、沖縄とは切っても切れない関係です。
(私)――お忙しい中、ここまで詳しくお答え頂きありがとうございます。最後になりますが、日本銀行としては、二千円札は普及してほしいですか。
それはもう!(←熱いトーン)
是非とも普及してほしいです!(←明らかに笑顔)
寧ろどんどん使ってほしいんです。せっかく作ったので(笑)
裏の紫式部もよろしくお願いします。
(私)――素敵なデザインですよね! お時間頂きありがとうございます。
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【結論】
二千円札を忘れないで。
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皆さんも二千円札を見かけたら、日本銀行のアツい心に思いを馳せてみて下さい。
――あれ? 待てよ。
「どんどん使ってほしいんです」
……使えない状態にしちゃった……。
以上、『熱き日銀のスノードーム』でした。
お後があんまりよろしくないようで。
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【おまけ:総括短歌】
ニッポンの 治安が良いから サツと札 姿を見せぬ 今日も非番だ
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【Staff】
企画・構成 清水舞鈴
撮影 清水舞鈴
編集 清水舞鈴
制作 清水舞鈴
監督 清水舞鈴
【Special Thanks】
林雄司氏(七味クリスタル執筆者)
スノードーム・ネット(スノードーム購入先)
財務省理財局
スペシャルサンクスまできっちりと読む、画面の前の貴方
今回の副題は、『デザイン画の500円玉は何?』です。
実は同じく職場のレジで発見したものです。
「平成五年皇太子殿下御成婚記念硬貨」と書かれている上、裏に鶴が二羽飛んでいるという、祝賀モード全開の500円硬貨。
ワタクシ平成六年生まれなので、生まれる前のアイテムです。知る訳がないんですね。
先輩方が「懐かしい」と騒ぐ中、さっさと自分の500円硬貨と交換して「手が早い」と言われました。
▲で、スノードームに入れようと思って
▲ここに描いてあるんだけども
貨幣損傷等取締法の一部を引用しましょう。
1 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない。
2 貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶす目的で集めてはならない。
3 第一項又は前項の規定に違反した者は、これを一年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。
時は遡り、財務省理財局との電話。
(私)――貨幣損傷等取締法って、「硬貨を使えなくしたら捕まるよ?」と言ってるように見えるんですが。
その解釈で合っています。
(私)――今手元に500円玉があるんですが、それを入れt
捕まりますよ?
(私)――アッ、ハイ。
▲よって、入れられなかったぜ!
あくまで紙幣限定です。硬貨をオモチャにしないように!
▲なお千円札は、ミニシャンデリアになりましたとさ
The END.