▲スーパーどころじゃない
客足を遠のかせるためにいつも雨乞いをしているのですが、その方法の一つがてるてる坊主の逆さ吊り。
しかし効果が一ヶ月くらい遅れて出てくるなど、即効性に難があります。
グレードの高いてるてる坊主を作れば、雨が秒でザンザカ降ってくれるはず!
●四月の地獄
そもそも何で客足を遠のかせようとしてるかというと、異動や新規採用で加入した職員の教育がまともにできないのと、己の知識の復習もままならないからです。
役所で窓口やってる私としては、民族大移動が起こる上に今までの戦力の一部が脱退する四月はマジで自殺者が出ないのが不思議なレベルで憂鬱。
お客さんもお客さんで、混むの分かってんだから朝一に来りゃ良いのに、わざわざ数十人待ちの昼過ぎや終業間近にやって来て「まだ?」とか言うんですよ。
四月で引っ越してるの自分だけとでも思ってるんか?
全ての四月引っ越し者は覚悟して役所に行きましょう。三時間待ちとかザラです。
(それ以前に、異動を律儀に四月にする必要は無いと思うんですけど)
●その手があったか
そういう訳で冒頭の導入文に繋がるのですが、ティッシュで作ったてるてる坊主の逆さ吊りに効果が見出せない。
じゃあどうしようか、てるてる坊主の歌にある通りに首でも切り落とすかと考えていた矢先に見つけました。
▲ビニールマントを羽織った坊主
その名は、スーパーてるてる。
ス ー パ ー て る て る
これだ!
ティッシュで作っただけのノーマルてるてるじゃダメだ。
この子達のように、平常時とは異なるてるてる坊主にすべきなんだ!
やろう!
もっと質の良い、もっと効果の高い、スーパーどころじゃないハイパーてるてるを作るんだ!
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●ハイパーてるてる入場
一気呵成に深夜テンションで生み出したのがこちら。
▲ビニール・真っ黒・雨柄・傘付き
種々様々に雨を願う気持ちを盛り込んでみました。
①ビニール
▲設計図
水を通さない素材と言えばビニール。
雨がどれだけ降ってこようが一向に構わないという無我の精神を表しました。
▲完成品
ランダムに歪んだ四角がなかなかの輝き。
ほぼ余り物だけで作ったにしては、なかなか良いのでは。
そもそもこのビニールクロス自体、元は風呂場の窓に貼る目隠しシートなので湿気ドンとこい勢なのです。
▲水浴びせてもご覧の通り
これなら濡れても心配ありません。
どうぞいくらでも雨を降らせて下さい、神様!
②真っ黒
▲設計図
晴れが白なら雨は黒だろう! ということで生まれ出でました。
どこかの地方では黒いてるてる坊主を作ることもあるとか。
なお鉄をそのまま布にくるむと錆が溢れ出てくるので、ビニール袋に入れた状態で包んでいます。
▲完成品。存外にウザいな、赤リボン
魔界の生意気王子をイメージしてみました。
早速吊して、神様に魔界の圧をかけましょう。
▲あっ……
そりゃ頭に金属入れてたら重いよね。
とはいえ、てるてる坊主は逆さ吊りにすることで雨乞いの意味になるらしいので、結果オーライ。
ただ見ているこちらが頭に血が上って気持ち悪くなりそうなので、この後一旦外しました。
え?
晴れをプラスと考えると、逆さてるてる坊主(マイナス)×黒てるてる坊主(マイナス)=晴れになるんじゃないかって?
何を言いますか。
誰が雨はマイナスだと決めたんですか?
私からすれば逆さてるてる坊主(雨)×黒てるてる坊主(雨)=豪雨ですよ。
さあさ、ザンザカ降らせちゃって!
電車止めるレベルでなあ!!
③雨柄
▲設計図
全身に激しい雨を模した縦縞を纏わせ、葉に付いた露を思わせるパールワイヤーを巻いた上に、裾に雨滴を象った石を配置。
雨が好きすぎて夜も眠れない感じになりました。
▲完成品
▲頭もぴょこんと出して雨滴化
こんな雨好きに雨を与えないなんて、ねえ?
そんな無慈悲なことしないでしょう、神様も、ねっ!
しないよな?(圧)
④傘付き
▲設計図
雨を望むとは言え、そのまま浴びれば風邪をひいてしまうので雨具は必携です。
本家スーパーてるてるのような雨合羽も着つつ、傘・長靴まで完備しております。
▲完成品
か、可愛いぃ!!
傘を装備させるために身体を斜めにしましたが、それにより首をかしげているような、幼子が一生懸命大人用の傘を真似してさそうとしているようなプリティが湧いて出ている。
ビニールてるてるより短く作ったのが功を奏しましたね。
しかも自立する!
こんな高クオリティのミニチュアの長靴や傘が通販で買えるのですから、良い時代に生まれたものです。
▲使用した雨具。在庫僅少につき注意
無我の精神と言いつつ完全武装している矛盾に愉しさを感じて下さい。
▲以上の子達を窓際へ。頼むぞ~
めちゃめちゃ見辛いですが、赤リボンの下に黒てるてるがいます(補記)。
●で、効果は
結論から言うとうっすら効いた。
▲お昼食べて帰ってきた際の傘
▲ほら、雨滴が!
吊した日が1月3日。雨降ったのが1月12日午後。
小雨がサラサラと振り、ただでさえ当時緊急事態宣言で露骨に減衰していた客足が更にスローリーに。
その減衰レベル、二時間待ち人数ゼロという素晴らしさ!
やりたい事務仕事が悠々と出来たのは入区以来二度目という吉事! Yes!
寧ろこの状況下でやって来た方々は凄い。
「今日しか来られない!」という意地で来ているので、書類万全・用件明確・当意即妙。
一回の受付が数十秒で済むというありがたさ。
受付ってお客さんの協力で成り立つんだなって……。
「あのぉ~引っ越すんですけど~何すんのか分かんなくてぇ~」と調べもしないでいきなり来庁する人は、この方々を見習って悔い改めて。
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【結論】
効かなくは無い。
でも天気に関係無く来たい人は来る。
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【おまけ:総括短歌】
待ち時間 長いと思う その前に 混むと予想して 心構えて
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【Staff】
企画・構成 清水舞鈴
撮影 清水舞鈴
編集 清水舞鈴
制作 清水舞鈴
監督 清水舞鈴
【Special Thanks】
みねおみつ氏(『スーパーてるてる』著者)
福音館書店(『スーパーてるてる』出版社)
華原ミサキ氏(てるてる坊主のイラスト)
イラストAC(↑のDL元)
ユザワヤ商事株式会社(全手芸品購入先)
てるてる坊主を見てくれている神様
きちんと用事と心構えがある来庁者の皆様
スペシャルサンクスまできっちりと読む、画面の前の貴方
一個あると「明日はどこかにおでかけなのね。晴れると良いね」と温かい気持ちになるてるてる坊主ですが、この度気付きました。
▲外から見ると異様
四つもてるてる坊主が並んでいると、祈りを超えて呪詛に見える。
そんな呪詛を撮影していたら、散歩中の犬に吠えられました。
The END.