清水の舞台から縄ばしごで降りる

次回は4月末に更新です。ナンパってまだ生き残っているんですね。

【勝手リベンジ】カメラマンベスト

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▲第一戦は貴様だ!

デイリーポータルZの読者の方なら、きっとご存じでしょう。

カメラマンベストをかっこよく着たい』という、女の挑戦。

そしてその結末を。

 

カメラマンベスト、貴様はこの私が征服(Conquest)してやる。

 

新ジャンル、参戦。

勝 手 リ ベ ン ジ

そこ、二番煎じとか言わない。

 


 

●ハイライト

これですよね。

私がデイリーポータルZで初めて読んだ記事です。

そして七年以上も、「あれはもう少しで攻略できそうだ」と思っていました。

 

そもそも、便利とお洒落は同居しない。

それは普段ファッションに興味のある方ならお分かりでしょう。

 

寒いから重ね着すれば、着ぶくれしたりデザインが決まってきてしまったりする。

かといって着たいファッションは、明らかに寒々しい。

逆も然り、暑いからと露出多めにすると一昔前のギャルっぽくなる。

「オシャレだけど暖かい涼しい」という商品も無くは無いが、求めてる程には暖かくない・涼しくないというものもチラホラ。

 

そんな中で、便利さにステータスを極振りしたアイテム・カメラマンベストをオシャレの土俵に連れ込もうとした。

その勇気に乾杯ですが、結果としては「モデルのせい」と卑下することに……。

 

――ここで解説の花巻さんに伺いましょう。今日は宜しくお願いします。

 

はいどうも、花巻と申します。

清水舞鈴の友人で服飾専門学校卒業のスタイリストです。

この記事の解説をしろということで無理矢理休み時間に押し入られました。

宜しくお願いします。

 

――早速ですが、何故「格好良くない」とご本人が思う結果になったのでしょうか。

 

おおまかに言えば、原因は二つです。

①ベストの色

②あのコーデ

 

まず①ですが、ベスト自体がインパクト抜群なので、これを取り入れようという姿勢が既に攻めてます。

ですから黒を選んだとしても、逃げてるとは誰も思わないでしょう。

安心して黒を選んで欲しかったですね。

灰色は「ぼやける色」なので、寧ろ一番危険なカラーを選んでしまったといえます。

 

――灰色はファッション雑誌で「可愛い」と特集されていますが?

 

あれはモデルの見せ方と差し色ありきで可愛いのであって、一般素人が真似するとまず失敗します。

実際、記事に出てくる皆さんは、体の何処にも差し色がありません。

制服だと思える程にスタッフ感割り増しになってますね。

エナメルピンクのハイヒールとか、ギラギラスタッズのベルトとか付けて欲しかった。

 

――最後のページのファッションは、ストールが差し色になっていますね。

 

多色使いなので、一気に賑やかになって素敵ですね。

しかし個人的には「区切り」があるべきだったのでは、と思うんです。

 

――区切り?

 

メリハリ、と言うべきでしょうか。

渋谷パルコの店員さんの考案したこのファッション、原因②ですが、実は難易度がそこそこ高いんです。

 

縦のラインがスーッと繋がっていますが、「ぼやけ色」の灰色とシャツ出しの影響で、全体に横幅が太く見える。

これは、背が高く細身な人向きのファッションです。

しかし、そんな理想型に近い方は少ないから、見るとお洒落だけど着てみるとそうでもなかったというのは当然のことなのです。

 

逆に言えば、その理想形なら格段におしゃれなわけで、記事でも「9頭身のモデルだったらもっとカッコいいはず」と言及し、縦伸ばし加工した切り抜きが載ってますね。

店員さんのセンスは間違いないものだと思います。

 

何にせよ、下まで同じ幅でズドンと行ってしまってるので、シャツINする・ズボンをスキニータイプにする・ベルトを締めるなどすれば、ファッションにリズムが出ますよ。

 

――では、色の方向性としては間違ってはいない?

 

灰色を、白・黒と合わせるのはグラデーションとして間違ってはいないんですよ。

 

ですがそれだけだとアイテムの個性が前面に出てしまい、「カメラマンベストを着ているな」とまず思われてしまう。

結果、「ベストという仕事着を着ている=オシャレは二の次」という思考回路が働き、オシャレという発想から遠のいてしまうのですね。

 

よって店員さんの「ストールでベストを隠す」という戦法は、そのまま使いましょう。

流石プロですから、これは非常に効果的です。

それから差し色、締めるべきところはきちんと締めることを考えます。

……ふーむ、いろいろ思いつくなあ。

 

――あ、すいません、花巻さん。

 

はい、何でしょう。

 

――ベストに関してのみ、条件があります。

 

聞きましょう。

……え? これですか?

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▲ベスト条件表

いやいやいや、①と②及びは良いとして、④は待て。

デザインと材質、サイズ感を求めたら、④は叶いませんよ?

 

――花巻さん、貴方は勘違いしている。

 

へ?

 

――私は「ファッションにカメラマンベストを取り入れる」のをやろうとしているのではない。カメラマンベストをかっこよく着たい』んですよ。

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▲こういうこと

――高いものほどデザインと質が良いのは自明の理。だがそれでは本家のリベンジにならんのですよ。「値段がなあ」って書いてあるし、本家はそもそも7000ってちょっと高めだしさ。

 

……俺、とんでもないことにつきあわされてんのかもしんねぇ……。

 

●敵、届く

――前述の条件に見合うベストを購入しました。翌日に届くとは驚きだ……Amazonの人達はちゃんと寝られてんのかしら。

 

やっぱりAmazonかよ。5000円未満なんて実店舗にほぼ無いからおかしいと思った。

割引使ったんだろ。

 

――まあね。「今なら〇〇%OFF」のタイミングが四月だった。

 

あー……そういう?

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▲届いた敵

――色は黒、Mサイズ、ポケット総数16、お値段3398円!

 

尋常じゃないな、その安さでポケットそんなにあるって。

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▲普通に着てみた

――ありゃ、もうちょい小さいイメージだったんだが。横がダボダボ。

 

お前が細いの!

無意識のスレンダー自慢やめろ、敵作るぞ。

 

●デザイン草案

――というわけで描いてもらったデザイン画を元に、組み合わせたのがこれです。

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▲A:クールなモノトーンレディ

まずは無彩色で固めてみました。今回着用する清水が166の50弱なので、細身を活かしたファッションです。

差し色は紫。

ストールとサングラスに使っています。

 

あ、言い忘れていましたが、ファッションは全て清水が持っているものしか使いません。

新たに買い足すことを匂わせたら拒否されたので。

 

――お前ね、私がファッションに命かけてる人に見えるかって話よ。

 

だろうね、仏像被ってるし。

顔どーすんの? グラサンで出るの?

 

――まだ決めてないんだよねえ……どうしよう。

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▲B:ふんわり山ガール

エラい多色使いのモコモコスカートがあるというので、使ってみますよ。

つーか何コレ?

職場に着てってんでしょ?

 

――残念だったな、スカートじゃない。

 

マジで? ……ああ、ホントだー!

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▲スカートじゃないから寒くないぞ!

で、コレ暑くね?

 

――なぜ四月にこれピックしたし。

 

なぜ四月にこの企画やってるし。

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▲C:リベンジ・ザ・マスターピース

本家が来ていたファッション(白シャツ・ストール・ワイドパンツ)を踏襲しつつ、清水の体型に合うようにポイントを修正したものです。

清水が意地でもやると言ってぶっ込んできました。

 

――そら違うアイテム使ったらオシャレになるだろうさ。元祖をクリアしてこそリベンジってやつやで、おやっさん

 

急なエセ関西弁やめろ、コナンがやって賛否両論だっただろ。

 

それは置いといて、日本人女性20代の平均身長は2018年の最新発表で159.5cm、平均体重は53.5kg程度だそうです。

清水は先述の通り166の50弱なので高身長兼スレンダーですね。

これはかなり期待できますよ。

 

……50弱っつうか48と49を行き来してるよな。

お前ちゃんと食ってる?

 

――朝はチビいパン二個、昼は弁当、夜が一番しっかり食べてるなあ。職場が通勤一時間以上かかる遠方だとうわーキツイっす。

 

全然笑い事じゃないんだが……だから胸も控えm

 

――その軟骨ピアス千切られたいか?

 

あ、すみません。

 

●撮影開始

――見てくれ〜、遂に買っちゃったんだこれ〜。

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▲これ以降、撮影はこの子でやる!

ほー、何これ、高かったの?

 

――いやーPowerShot G7 X MarkⅡって言うんだけど10万円しないのに高画質・ナイスな手ぶれ補正がついててしかも過剰な機能は無いから初心者にぴったりなのよこれやっぱあれよね初心者こそ初期投資が大事っていうか五万くらい出さないと駄目よね私思うn

 

あ、そこまでで。

 

その何か凄いデジカメで撮影宜しく、モデルさん。

 

●A

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▲着用の結果

グラサンで出るわけね。

まあ、マスクつけたら完全に不審者だが。

 

――ポイントは「オシャr……ん?」となるところだわ。イイと思いかけて目を疑う感じ。そしてバレたら終了。

 

個人的にすげぇなと思うのは、お前の堂々とした態度だわ。

今これ一人で撮ってるんでしょ?

 

――そうだよ……何でニューヨークにいるのよ花巻……

 

そらファッションの勉強だよ。

いきなりテレビチャットつなぎやがって。

 

道行く人が、何やってんのとか聞いてこないの?

 

――聞かれたよ……。「演劇の小道具の写真を準備してるんです」って答えたら、役作り熱心ねー偉いわーって。

 

お前演劇部だったっけ?

 

――いや、小学四年からずっと文芸部。

 

平然とそういう嘘をつける辺り、流石言葉の魔術師……!

 

――一ミリも思ってないこと言うのやめろい。

 

●B

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▲着用の結果

いるいる、こういう奴。

しかしお前のイメージにそぐわないなあ。

 

――「山ガールはセミロング」と勝手に思ってる。だからショートの今撮るものじゃなかったなー。

 

セミロング且つ茶髪でな。

んでぱっつん前髪。

 

――そうそう。

 

でもこれもなかなか良いな。

自分で提案しておいてアレだけど、これで高尾山デートに来られたとしても、俺はイケる。

 

……で、耐えきれないから言っていい?

何その白い仮面。

 

――あ、これ? モザイク。

 

は?

 

――詳しくはこれをチェケラッ。

 

宣伝お疲れ。

呪われてんのかと思ったけど。

 

●C

――ラスボスだ。

 

お前ホントにやんのコレ?

期待できるとは言ったけど、マジで人選ぶぞ。

 

――いやイケる……! これを着ずして何がリベンジか!

 

意地張っても火傷するだけだぞ……。

 

――例えそこが業火であろうと、道あらば進むべし!! はいやー!!!

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▲着用の結果(丁度良く紅葉が飛んできた)

!?

 

嘘だろ……?

に、似合っている!?

馬鹿な!

 

細身だから……?

違う……!

 

背が高いから……?

 

いや……これは……。

 

――どうよ花巻ー!

 

自信だ!

他ならぬ「リベンジできているに決まっている」という、根拠が無いからこそ揺るがない確信が……こいつを昇華させている!

 

モデルのせいでそう見えないと、思う必要はないのだと。

着たいものを着て、歩くままに往く。

それがなりたい姿を作るのだと……!

 

――勝ったッ! 第一回勝手リベンジ、完!

 

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【結論】

似合う服を探すな。

服に自分を似合わせろ。

 

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【おまけ:総括短歌】

衣服とは 己を魅せて アゲるもの 自信なくとも 胸を張るべし

 

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ほー、こんな感じで書いとるのねー。

 

――左様。

 

たださ、一個いい?

この結論ってさ……悪口じゃね?

 

――何だい、事実やん? 好きなもん着て堂々としてりゃいいのよ、人目気にする前に。それで寄って来ない奴のことを何で気にする必要があるのかって話。

 

へえ、そういうことか。

俺がパッと見た限りじゃ、「何着ても似合わんデブは痩せて来い」って言ってるように思えるんだよね……。

 

――ダイエットするっていう努力ができるなら良いんでない? あるいは太ってても関係なく着て、自信満々に歩くとか。つーか花巻……お前今おデブぅな方々をディスったな……。

 

アメリカはレベルの違うデブ多いから。そのこと言ったのよ。

日本は隠せるデブ、アメリカは隠せないデブ。

日本デブはいくらでもファッショナブルになれると俺は思ってる。

 

――だそうですよ日本の皆さん。着たい服着てバンバン歩きましょう!

 

だからお前が言うと嫌味なんだってば!

 

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【Staff】

企画・構成 清水舞鈴

撮影    清水舞鈴

編集    清水舞鈴

制作    清水舞鈴

監督    清水舞鈴

 

【Special Thanks】

べつやくれい氏(『カメラマンベストをかっこよく着たい』制作者)

デイリーポータルZ

イッツ・コミュニケーションズ株式会社(デイリーポータルZ運営会社)

東急グループ(イッツ・コミュニケーションズ株式会社の所属系列)

 

イラストレイン(スライドに使用したイラストのダウンロード元)

 

郷土の森博物館

気さくなおば様

 

花巻ワタル氏

 

スペシャルサンクスまできっちりと読む、画面の前の貴方

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(時は撮影直前に戻る) 

――実はさー、いつも副題っていうの付けててさ。

 

副題? セカンドテーマってこと?

 

――そうそう。折角だから今回は花巻がつけてよ。それに即して今回の記事作るから。

 

ほー、どうしようかな。

……よし、じゃあ『顔出しの限界に挑む』で。

 

――ふぁい!?

 

すっごく遠くで顔出してて、近づいてくるとススキが丁度よくなびいて顔が隠れる、みたいな。

……あ、お前公務員だったっけ。

 

――そ、そうだよ(動揺) でも花巻に頼んだ以上、それで行くけどさ……

 

いや、お前社会的生命無くなるんじゃね? 無かったことにしていいぞ?

 

――ぬうううう……いや、グラサンで出るわ。それで良いことにしてくれ。

 

あいよー。ま、お前は不細工じゃないから出ても大丈夫でしょ。

 

――その言葉は大変嬉しいが自分では普通と思っているのでね。素顔全部は晒さぬよ?

 

こうして私はAの時にグラサン、Cでギリギリの撮影を行ったのでした。

紅葉、本当にグッジョブです。

 

ところで、写真の靴・靴下が全て同じであることからも分かる通り、撮影は一日突貫で行いました。

服を持ち込んでトイレで着替えたのです。

服三着分持ち歩くのが地味に重かった上、空きが充分あるにも関わらずちょっとでも長引くとすぐ声を掛けてくる他のお客さんがいて、精神的に面倒臭かったです。

あの人、お腹下してトイレ籠城している人にも声掛けるのかなあ。

優しい半分微妙に大きなお世話だ……。

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▲着替え中

The END.